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〝凡才の魔女〟ルーコの軌跡~才能なくても、打ちのめされても、それでも頑張る美少女エルフの回想~  作者: 乃ノ八乃
第五章 魔女殺しの魔女ルルロア

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第235話 依頼の難易度と変異種の存在


 箒をガンガン飛ばしながら向かうのは街の北東に位置するフォルニア鉱山という場所だ。


 ここでは主に魔鉱石が採掘されており、街から鉱夫達が出稼ぎに出ている。


 ところが数日前から魔物が鉱山に住み着き、働いている鉱夫達に被害が出たそうだ。


 ギルドでは依頼を張り出し、受けてくれるパーティが現れるのを待っていたらしい。


 鉱夫達からすれば一刻も早く仕事場を取り戻してほしいだろうし、ギルドとしても鉱石採掘が滞るのは避けたいからと、結構な報酬を提示したところで丁度、私がやってきたとの事だ。


 正直、依頼を受けずに鉱山へ向かい、魔物を倒すという選択肢もあったけど、ギルドがすでに絡んでいる以上、後々が面倒な事になる。


 それなら依頼を受けてから向かった方が返って時間を取られないと、受注したのだが、受付嬢、引いてはギルドマスターには渋い顔をされた。


 この依頼の難易度は精々一級、もしくは二級中心のパーティで受ける程度のもので、優先度が高いため報酬は多いものの、そこまで難しくはない。


 だから魔女みたいに高位の称号持ちは受注を避けるべきなのだけど、今回ばかりはそうも言ってられないと、神聖教国での依頼を盾に強引に受けてきた。


 もちろん、報酬はいらないと断ったし、代わりに魔鉱石を現場からいくつか持ち帰る許可ももらった。


 渋っていたギルド側も、最終的には早期解決に繋がるならと了承し、今に至る。


「――――見えてきた。入り口は……あそこか」


 最高速で箒を飛ばすこと数十分、ようやく見えてきた鉱山の入り口付近に向かって減速しながら降り立った私はそのまま強化魔法を発動させて中へと駆け込んだ。


……本来ならもう少し下調べしたり、鉱山内部を探ったりするんだけど、日が暮れてからの探索は面倒だし、危ないからちょっと急ぎ目に行かせてもらおう。


 鉱山の内部は明かりを照らす魔道具が等間隔で設置されているため、少し薄暗い程度で済んでいる。とはいえ、やはり外と比べて視界が悪いのは変わらない。


 依頼の難易度からすれば魔物自体の強さは問題ないけれど、念のためと()()()()()()用心しておく。


「確か魔物が住処にしているのは少し奥まったところにある開けた場所だったっけ」


 ギルドからの情報では鉱山内部はいくつかに分かれており、一番大きな通路を道なりに行けば魔物の住処に着くらしい。


 まあ、ずっとそこにいるわけではないだろうし、この狭い通路で遭遇した場合も想定しておくべきだろう。


 周囲に警戒をしながらも、鉱山内を走り抜け、目的の住処へと駆けていく。


 空間内に自分の足音だけ響く中、やがてそれに交じり、地響きのような唸り声が聞こえてきた。


 通路の先、開けた場所へ差し掛かる入り口の前で立ち止まり、中の様子を窺うと、そこには壁一面に拡がり、光り輝く魔鉱石とその中央で寝転がる一匹の魔物が目に入る。


「見つけた。あれが目的の魔、物……?」


 情報では鉱山を襲撃したのはウォルズドロールと呼ばれる二足歩行の魔物で、大きさとしては人の倍くらい、力はあっても愚鈍で知能もそこまで高くないのが特徴だ。


 魔法に対する耐性はそこそこあるが、それでも威力や物量でどうにかできる程度のものだし、外皮と脂肪が厚いけれど、接近戦そのものはその愚鈍さ故に近接職の格好の餌食にもなるという種で、多少、厄介ながらも、決して強いとは言えない魔物。


 その筈なのだが、目の前の魔物は大きさこそ人の倍程度だが、その身体のほとんどが魔鉱石のようなものに覆われており、見た目は完全に別物となっていた。


「……あれはもうウォルズドロールとは呼べないね。たぶん、餌がなくて魔鉱石を食べた結果だろうけど」


 予想でしかないけど、ここを襲撃した時点では情報通り、ウォルズドロールだったのだろう。


 経緯は不明だが、はぐれ魔物が餌を求め、たまたまこの鉱山に迷い込んだ結果がこの変異……餌として求めた鉱夫達が上手く逃げ出せた事も起因しているのかもしれない。


 こういった魔物の変異はそこそこ珍しいが、問題はそこじゃない。あの魔物を覆っている物が魔鉱石と同様の効果を持っていた場合、その危険度は一気に跳ね上がる。


……結果論だけど、私がこの依頼を受けたのが不幸中の幸いだね。もし、ギルドの基準でパーティが派遣されてたらまずかったかも。


 魔鉱石は魔動車の部品にも使われている事から分かるように魔力に反応する性質を持っている。加工次第で変化するけど、確か元々は魔力を受け流す性質だったと思う。


 無論、あの魔物の外皮を覆っている物が同様の性質を持っているとは限らないが、それでなくても単純に魔鉱石は硬い。


 鉱夫達が何度もつるはしを何度も振り下ろし、ようやく採掘できるといった程だ。


「……色々と面倒な事になったけど、ここで退く訳にはいかないし、やるしかない、か」


 通常なら一度戻ってギルドに報告、依頼の難易度と報酬、あるいは他のパーティと合同で討伐部隊を組んだりするのだけど、生憎とそんな事をしている時間がもったいない。


 魔法を受け流すという性質は魔女である私にとって相性は最悪だけど、やりようはある。


 幸い、まだあの魔物は私に気付いていない。だから準備する時間はまだある。


 崩落の可能性がある以上、鉱山内部で派手な魔法は使えない。


 だから離れたこの位置から表皮の魔鉱石らしきものを避け、貫通力に優れた魔法で急所を撃ち抜けば何の問題もなく仕留められる……筈だった。


「――――ようやく見つけた!お前が鉱山に住み着いた魔物だな!」


 魔法を準備し、狙いを定めていたその時、突如として聞こえてきた声と光景に思わず目を見開く。


 いつの間にか変異種の魔物の正面に立ち、そんな事を(のたま)うのは木の棒を構えた黒髪の少年だった。


っなんでこんなところに子供が……!?


 外見でしか推測する事はできないが、年齢は十にも満たないように見える。武器も木の棒だし、構えも素人……服装から見てもその辺りの村か、街の子供だろう。


 たぶん、ここからは死角になる位置に別の入り口があるのだろうけど、あの子供が変異種の前に立ちはだかるまで気付けなかったのは失態だ。


 こうなってしまえばもう下手に不意を撃つことはできない。


 何故なら、たとえ一撃で仕留める事が出来たとしても死に際に暴れられると、近くにいるあの子供は確実に巻き込まれるからだ。


「っ……とにかく、今はあの子供がこれ以上、余計な事をする前にどうにかしないと」


 思い描いていた討伐計画はすでに破綻した。どうしてここに子供がいるのか、あの変異種の存在が知られているのか、様々な疑問が浮かんでくるが、それを考えるのは後回しにする他ない。


 別に私は正義の味方じゃないけれど、それでもここで見て見ぬ振りができる程、冷酷にはなれなかった。



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