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〝凡才の魔女〟ルーコの軌跡~才能なくても、打ちのめされても、それでも頑張る美少女エルフの回想~  作者: 乃ノ八乃
第五章 魔女殺しの魔女ルルロア

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第229話 気まずい打ち合わせと思わぬ技能


 ギルドマスターが大まかな説明を終えた事でその場は解散となり、私達三人はギルドから離れた人気のない店で今後の予定を打ち合わせていた。


「――――っていうか、普通、今から打ち合わせって時にがっつりご飯を頼む?」


 店に入り、それぞれ注文を終えた後でベールがイストへと突っ掛る。


 ギルドでの話し合いからそうだったけど、ここにくるまでの道中、やたらとイストに文句というか、言い掛かりに近い、いちゃもんをつけては突っ掛るを繰り返していた。


「はぁ……いいでしょ別に。そもそも、俺は依頼の報告だけ済ませたら朝食を取るつもりだったんだよ。それがあれよあれよと連れていかれて、食べる暇がなかったんだから」

「……ここのお金は私が持つから好きに注文して。打ち合わせも食べながらで問題ないから」


 ベールのいちゃもんに答えつつ、半眼でこちらを睨むイスト。その視線に含まれる非難の正当性はもっともなので、私は逃れるように目を背け、そう言葉を返す。


「ぶ~……ルーコちゃんがそう言うならしょうがないね。すいませーん、追加で注文良いですか~?」

「…………俺が言えることじゃないけど、いい性格してるよ。本当に」


 私が問題ないと言った事で膨れながらも引き下がったベールは、さっきまであっさり切り替え、新たにお菓子類を追加注文。


 それを見たイストが呆れ混じりに再度、ため息を吐いた。


 そして、ひとまず注文が出揃い、少しの間、カチャカチャと食器の当たる音だけが響く。人気がないお店を選んだとはいえ、ここまで静かだとは思わなかった。


「…………それで?打ち合わせっていっても、具体的に何を話し合って、何を決めるつもりなわけ?」


 痛いくらいの静寂に耐えかねたのか、イストが食事の手を止め、そう切り出す。


 正直、流石に私もこの沈黙は気まずかったので、イストから切り出してくれたのは助かった。


「……話し合うのは依頼をどう進めていくかについて。差し当たって今、一番に考えないといけないのは移動手段、かな」


 今回の目的地である神聖教国はここから物凄く遠い。仮に徒歩での移動となると、いくつもの町や村を経由し、国境を越えるため、少なく見積もっても数か月は掛かるだろう。


 私一人なら箒を使うのだけど、イストはもちろん、ベールも乗れるか分からない以上、その移動手段は取れなかった。


「あー……移動手段ねぇ、そういえば今回、魔動車は借りれないんだっけ?」

「うん、ギルドは表立って支援できないって理由もあるけど、魔動車を使っても数週間は掛かる距離だから、そこまで長期の貸し出しはできないみたい」

「……まあ、あれはギルドの紋章が入ってるし、使えないのは妥当じゃない?そもそも、借りれたところで長距離移動に整備なしで動かし続けるのは無謀でしょ」


 ベールの言葉を皮切りにそれぞれの意見を口にする。確かにイストの言う通り、魔動車は便利な反面、専門の知識を持った人による整備が定期的に必要だ。


 先日、使ったように短期間なら問題ないが、今回のような長期間の使用は整備が必至。


 ギルドからの協力を仰げない以上、やはり魔動車での移動は現実的ではないだろう。


「……そうなると、移動手段は徒歩って事になるけど」

「いや、流石に徒歩はきついでしょ。徒歩だと数か月くらい?そんなに経った後じゃ、誘拐犯が捕まったって情報が回って証拠を揉み消されるだろうし」

「……徒歩以外だと他の手段は馬車を乗り継ぐって手もある。でも、相当、運が良くない限り、乗り継ぎの度に足止めを食らうから下手をしたら余計に遅くなると思う」


 街道に沿って村や町を行き交う定期便は魔物や野盗など、様々な要因で止まってしまう事が多々ある。


 ただでさえ、定期便の運航する時間なんて曖昧なのに、不確定要素で容易く止まってしまうとなればまず、当てにはできない。


 他にも商人の馬車に頼んで乗り合わせるという手もなくはないけど、初めて訪れる場所でそれを良しとしてくれる相手はそう簡単に見つからないだろう。


「んーギルドから借りられるなら整備は問題ないんだけどね~……まあ、関与できないならしょうがないか~」


 もぐもぐと口を動かしながら私とイストの会話を聞いていたベールが何の気なしに呟いた。


「……問題ないってどういうこと?」

「ん~?どういうって……ああ、そっか。言ってなかったっけ。専門は違うけど、科学の勉強をする過程で必要になったから知識と技術はあるんだよ。だから一から作るのは無理だけど、整備や組み立て、修理くらいならできちゃうんだよね、私」


 傍から聞くと自慢話にしか聞こえないけど、特に得意げな様子もなく話す彼女の口振りからしてどうやら違うらしい。


 多少の概要は知っていても、詳しい訳でもない私では彼女の扱う薬品類の知識と魔動車の整備などに関する知識が結びつかないが、この場面で嘘を吐く理由もないので、おそらくは本当の事だ。


「……仮にコイツの言っている事が本当だとしたら整備面の問題はなくなる、それならやりようはあるんじゃないの?」

「は?本当だとしたらって何?嘘なんてついてないんですけど?」

「面倒くさいからいちいちイストに絡まないで。それで、改めて確認するけど、魔動車関連の知識と技術があるのは本当?」

「む~ルーコちゃんまでそんなこと聞くの?……本当だよ。嘘だと思うなら後で証明してもいいし」


 ぷくっと頬を膨らませて不貞腐れるベールを他所に私はその知識と技術を使ってどうにか移動手段を確保できないかを考える。


 整備の問題が解決したところでギルドから借りる事はおそらくできないだろう。


 たとえ、上手く紋章を偽装できたところでギルドのものである以上、どこからか関与が露見し、問題になる可能性は捨てきれない。


 かといって魔動車を購入するのは難しい。高値故にお金が足りないという問題もあるけれど、それ以前に魔動車は基本的に受注生産なので、今から頼んでもすぐに手に入るわけではないからだ。


 そこから一分にも満たない程の沈黙の後、同じ結論に至ったのか、私とイストが同時に口を開いた。



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