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〝凡才の魔女〟ルーコの軌跡~才能なくても、打ちのめされても、それでも頑張る美少女エルフの回想~  作者: 乃ノ八乃
第五章 魔女殺しの魔女ルルロア

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第202話 不遜な態度と魔女の立場


「――――失礼します。魔女ルルロア様を連れてまいりました」


 案内の職員に連れられてギルドの二階、その奥にある特別応接室へとやってきた私は部屋の中で腕を組む大男と目が合った。


「……おう、ご苦労さん。お前はもう下がっていいぞ」


 大男は目線をそのままに案内の職員をそう言って下がらせると、顎を動かし、私に座るよう促してくる。


 その尊大な態度とこの部屋で待っていた事を考えれば目の前の大男がギルドマスターなのは間違いない。


……いくらギルドマスターという立場でも魔女を相手にその態度は不遜すぎると思うんだけど。


 この街にきて日が浅い私はここのギルドマスターとの面識はないが、それでも他の街と比べて対応が酷いと言える。


 鍛え上げられた肉体と歴戦の証である傷、唯一、年齢を窺えるのは白髪混じりの髪だが、纏う覇気のせいで微塵も年老いたようには見えない。


 おそらく、今も冒険者としては現役なのだろう。


 これまでの経験に裏打ちされた実力とギルドマスターとしての自信が魔女とはいえ、小娘にしか見えない私に対してあの態度を取らせているとみるべきだ。


「…………何の用?私は報酬をもらいにきただけなんだけど」


 別に私個人としてはどう思われようと気にしないが、ここで許容してしまえば後が面倒くさい。


 だから座れというギルドマスターの命令を無視して立ったまま言葉を返してやった。


「……俺は座れといったつもりなんだが?」

「そう、私の耳には聞こえなかったけど?」


 話があるならそれ相応の態度を取れと言外に伝えてやると、ギルドマスターは露骨に表情を歪め、大きく舌打ちをした。


「……まあ、いい。お前、どんな手を使った?」

「…………何のこと?」

「惚けるな。お前みたいな小娘が魔女なんて称号を得られるわけがない。コネか?金か?それとも…………」


 正直、質問の意味が分からなかった。


 外見と年齢から侮られる事も、本当に魔女なのかと疑われる事も間々ある。


 しかし、今回の依頼はギルドから魔女として乞われたものだ。


 つまり、ギルドは私を魔女として認知し、その実力を認めているという事になる。


 にもかかわらず、肝心なギルドの長がそんな事を言い出すのはどういう了見なのだろうか。


「――――馬鹿にしているの?それとも馬鹿なの?魔女……いえ、最上位の称号がその程度の価値しかないと?」

「ッ……!?」


 怒ったわけでもなければ、問い詰めているわけでもない。


 ただ本気でそんな世迷言を言っているのならギルドマスターなんて辞めてしまえ、そういう意味を込めて目を細めただけ。


 たったそれだけなのだが、ギルドマスターは息を吞み、額に汗を浮かべていた。


「……もう一度聞く。()()()()()?」


 怯んだ様子のギルドマスターに再度、問う。


 これ以上、無駄に時間を使わせるなという私の意図を察したのか、ギルドマスターは不遜な態度を引っ込め、用件を話し始めた。


「…………この街の近辺でとある魔物が目撃された。魔女であるお前にその討伐を頼みたい」


 ギルドマスターの話によると、ダイアントボアの目撃情報とは別に、最近、街近辺の洞窟、その周辺でアミルアントという魔物が目撃された。


 このアミルアントは所謂(いわゆる)、昆虫のような魔物で、強靭な甲殻を持ち、並大抵の物理攻撃や魔法攻撃を弾いてしまう。


 おまけにこの魔物は単体で行動しない。


 一匹の女王とでも言うべき存在を頂点に群れを形成し、最悪の場合、数百匹単位で増えていく。


 実際、過去の事例ではアミルアントの被害に遭い、いくつもの村や町が地図から消えて数万人規模での死傷者が出ている。


 だから手遅れになる前に早い段階で対処したいのだが、いかんせん、並の冒険者では単体でも手を焼く魔物……まだ早期で群れの数自体は少ないかもしれないが、それでも任せられるような人材がこの街にはいない。


 そのため、たまたまこの街にいた魔女である私に白羽の矢が立ったとの事だ。


「――――なるほど、話は分かった。でも、その話とさっきの反応は矛盾している。魔女としての力を当てにしているのなら私にその資質を問うのは明らかにおかしいと思うけど?」

「それは……」


 言い淀むギルドマスターに対して私はそのまま畳みかけるように言葉を続ける。


「……大方、最初の会話の流れで魔女としての資質を証明するためにこの依頼を受けてみろとでもいうつもりだったんでしょ。私が討伐すればそれでよし。討伐に失敗しても、魔女が失敗したという事実を盾に国、あるいは他のギルドへ応援を要請できる。貴方からすればどっちに転んでもいい……違う?」

「…………ああ、その通りだ。うちのギルドにはアミルアントの群れを討伐できるような常駐の冒険者はいない。だからといって最初から他を頼ればここの信用に関わる……どうしようかと思っていた時にお前が現れたって訳だ」


 観念したのか、ギルドマスターは包み隠さずに全てを話した。


 アミルアントという脅威を前に信用問題なんてくだらないとも思うが、組織を取り仕切る立場としては無視できないのだろう。


 ただ、それはあくまでギルドマスター側の事情……私には関係ない。


「最初の態度とそんな事情を聞かされて、素直に私がその依頼を受けると思う?」

「……報酬は弾む。準備にかかる費用も全てギルドが負担する。必要なら人員を用意しても構わない…………だから頼む、この依頼を引き受けてくれ」


 頭を下げるギルドマスターに視線を向けつつ、私は今回の依頼をどうすべきか考えを巡らせる。


私に依頼を受ける義務はない……でも、放置すれば面倒な事になるのは確実…………仕方ないか。


「……分かった。ただし、報酬に関しては金銭の他にいくつか要求したい事がある。それでもいいなら引き受ける」


 目的である情報収集もまだ終わってないし、今ならギルド側も多少、無茶な要求も呑んでくれるかもしれない。


 そういう打算を元に条件を出すと、ギルドマスターは一瞬、怪訝な顔をするも、すぐに表情を戻して口を開く。


「…………ギルドとしてできる範囲の事なら応えると約束する。それでもいいか?」

「ええ、それで十分。それと人員いらないけど、詳しい場所の詳細とアミルアントに関する資料は用意して。私はここから西にある宿に滞在してるから」


 ギルドマスターに資料を持ってくるよう言付け、部屋を後にした私は、今回の依頼を達成するに当たって、必要になるであろう、とある人物を探すべく、街へと繰り出した。


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