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〝凡才の魔女〟ルーコの軌跡~才能なくても、打ちのめされても、それでも頑張る美少女エルフの回想~  作者: 乃ノ八乃
第四章 魔女のルーコと崩壊への序曲

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第178話 無限対創造


反覆創造(クリエレイション)』という強力な魔術……それだけでも並の相手どころか、最上位の称号持ちだろうと完封できる強さと万能さを兼ね備えたアライアの代名詞だ。


 そしておそらく〝醒花〟である『創造具現(リクリエレイション)』はそれを強化したものだろう。


「……さて、ルーコちゃんも薄々察してるだろうけど、私の醒花は『反覆創造』の延長。それがどういう意味を指すのか……分かりやすく教えてあげようか――――」


 瞬間、激しい光と共に轟音が鳴り響き、私の立っていた場所が抉られる。


っ物凄く嫌な予感がしたから咄嗟に飛び退いたけど、今のは…?


 手を広げ、杖をくるりと回すアライアの動作には注意を払っていたし、黒柱がどこから現れても対応できるように身構えていたけど、あれは想定外。正直、勘に従って避けていなければあのまま決着がついていた。


……あの現象、私の見立てが正しければレイズさんの使った雷魔法と同じ性質のもの……別にアライアさんが使えても不思議はないのかもしれない……でも、今さっきの一撃は何かがおかしい気がする。


違和感を覚えながらも、その正体が掴めないもどかしさに思わず歯噛みする。


「……なんにしても雷が襲ってくることに変わりはないならそれを頭に入れて――――」

「襲い来る稲妻を避けた少女を待つのは炎の包囲網、下から生えるは岩棘の絨毯、上へ逃げれば嵐の天井、逃れる術やさあ、いかに…………なんてね」


 私の独り言に被せるように詩のような言葉の羅列を口にするアライア。いきなり何をと疑問を言葉にするよりも先に、突如として私の周りを灼熱の炎が取り囲む。


これじゃ逃げ場が……っ!?


 突然の炎で左右前後の退路を封じられたと思った次の瞬間、地面から強固な岩の棘が無数に生え、動揺する間もなく、回避を強要される。


 周囲を炎で囲まれ、下には岩の棘がある以上、私が逃れる道は上にしかない。


 風を撃ち出して急加速、炎の壁や岩の棘を置き去りにして上空へと逃れた。


「これで一旦、体勢を立て直し……なっ!?」


 空の上は私の領域……とまでは言わないが、少なくとも上空へと逃れた私へ攻撃を仕掛けてきた相手はいなかった。


 だから上空(ここ)は安全圏だと勝手に思い込んでいたツケがここで回ってきてしまった。


 逃げた先に待ち受けていたのは猛烈な風が吹き荒れる嵐の空。それに巻き込まれた私は暴風に流され、錐揉みしながら墜落しそうになる。


っまず…………ぐっ……このぉっ!!


 嵐の中で歯を食い縛り、無理くり体勢を立て直して魔力を込め、こちらも風の魔法で対抗しようとするが、生半可な威力では呑み込まれてしまう。


 そのため無限の魔力を加減なく思いっきり注ぎ込んで魔法を解き放つ。


 瞬間、今までの比ではない出力の暴風が空へと広がり、嵐を薙ぎ払っても勢いは止まらず、辺り一帯の雲全てを吹き飛ばして、天候を変えてしまった。


「っ…………!?」


 正直、自分でもこれほどの威力が出るとは思わず、反動で私自身も派手に吹き飛ばされる。


 幸い、岩の棘が敷き詰められた真下に落ちる事は回避できたので、致命傷を負う事はなかったものの、それでも落下の衝撃で肺の空気が押し出され、一瞬、意識が途切れかける。


「――――いやぁ、ルーコちゃんには何度も驚かされるね。まさかたった一発の魔法で天候さえ変えちゃうなんて」


 暴風の余波に髪を揺らしながらアライアは感心したようにそんな言葉を口にした。


 そこに他意はないのだろう。でも、傍から聞けば賞賛にも受け取れる言葉ではあるけれど、どこか他人事みたいな響きは対峙している側からしたらまるで歯牙にもかけられていないと感じてしまう。


「…………それは……皮肉……ですか」

「ううん?ただ凄いなと思っただけだよ。勘違いさせてしまったなら謝るさ……それよりも随分と苦しそうだねルーコちゃん。どう?降参する?」

「誰が…………」


 再びの問いに反射で出かけた言葉を呑み込む。これ以上、無理をしてまで戦う理由はないけど、醒花の正体も掴めないまま降参するのは何か悔しい。


……さっきの攻防を鑑みるに、アライアさんの醒花は言葉にした現象をそのまま具現化するとか……ううん、最初に見た時は特に何も言わず森を再生していた筈で…………まさか――――


 ありえなくはない。創造の魔女という存在を考え、その可能性に至った。


「ルーコちゃん?」

「……その醒花はもしかして自分の想像した現象をそのまま出力するなんて馬鹿げた力だったりします?」

「お、たったあれだけの攻防でよく分かったね。流石の観察力だよルーコちゃん」


 私の推測をアライアはあっさりと何でもないように認める。


 それはつまり、アライアはただ頭の中で思い描くだけでありとあらゆる現象を再現できるという事だ。


「っ……いくら何でもそれは反則が過ぎるんじゃないんですか?」

「ふふ、それはお互い様じゃないかな?ルーコちゃんの無限(それ)だって十分に反則だと思うよ」


 確かに私の醒花も反則じみた力を持っているけど、あくまで魔力を無限にするだけ……魔法を発動するのには詠唱と呪文を省いたとしても、想像、抽出、変換、出力と通常の行使と同じ段階を踏まなければならない。


 無限の魔力を使って知識と手数の豊富さを活かすのが私の強み……そして、アライアはその工程をすっ飛ばして同じか、それ以上の結果を出せる。


 言ってしまえばアライアの醒花は私の醒花の上位互換だということだ。


……無限と違い、いくらでも出力はできないだろうけど、私の醒花に時間制限がある以上、それも優位には働かない……正直、勝てる部分が見つからないかも。


 たぶん、突き詰めていけば私だけの利点も見つかるとは思う。


 でも、魔女になったばかりで醒花を使い始めたばかりの私とアライアでは積み重ねてきた年月が違った。


「……だからと言って諦める気は微塵もないですけど」

「?」


 疑問符を浮かべるアライアを他所に独り言を呟き、首を振って決意と共に魔力を練り上げる。


「……正直なところ、今の私じゃアライアさんの醒花に対応できる気がしません。言ってしまうと、醒花もそろそろ限界ですし、次で最後の攻撃になると思います」


 馬鹿正直に私の現状と次の行動を口にすると、アライアは一瞬、目を丸くし、その後、思いっきり噴き出して大笑いをし始めた。


 そこまで大笑いされるとは思ってなかったけど、まあ、その反応は予想通り。何も私だって何も考えずに全てを話した訳じゃない。


 こうして話してしまえばアライアは私の攻撃を正面から受けざるを得ないと思ったからこそだ。


「…………ふふふ、うん、いいよ。ルーコちゃんの狙いに乗ってあげる。このままじゃ、私が一方的に勝っちゃうだろうしね」

「……本当の事ですけど、正面からなんかむかっとしますね。でも、ありがとうございます……それじゃいきますよ――――」


 練り上げた無限の魔力を自身の周りへぐるぐるぐるぐると巡らせて循環させ、そのまま風へと変換し、唸りを上げながら密度を重ねていく。


「……なるほど、それがルーコちゃんの全力……なら私もそれに応えるとしようかな――――」


 私の魔術に対して呼応するようにアライアの周囲へ火、水、土、風などのあらゆる属性の現象が渦巻き、混ざり合いながらどんどんと圧力を増していった。


 お互いに魔力と圧力が最高潮まで高まったその瞬間、まるで示し合わせたかの如く、同時にそれを撃ち放つ。


――――そして辺り一帯を衝撃と轟音が駆け抜け、私の視界は真っ白に染まった。



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