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〝凡才の魔女〟ルーコの軌跡~才能なくても、打ちのめされても、それでも頑張る美少女エルフの回想~  作者: 乃ノ八乃
第四章 魔女のルーコと崩壊への序曲

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幕間 療々の賢者と少しの罪悪感

 

「――――ルーコサンには少し悪い事をしたかもしれないっスねぇ」


 鬱蒼とした木々の生い茂る森の奥地。人里離れた辺鄙なこの場所で、ぼさぼさの頭を掻きながら彼……〝療々の賢者〟リオーレンは道とも言えない道を歩き、呟いた。


 片耳をなくした幼いエルフの少女ルーコ……そして彼女のパーティである創造の魔女一行と少なからず関わってきたリオーレン。


 一年にも満たない間ではあるけれど、創造の魔女の友人として、あるいは療々の賢者として、彼女達と接してきた。


 だから今、こうしてこの場所を歩いている事、あの子に嘘を吐いてしまった事に少しの罪悪感を覚えながらも、悲願のためには仕方ないと首を振り、リオーレンは歩みを進める。


(……まあ、あの子の想いや目的を知った上で裏切る事に少しの罪悪感しか覚えない時点でとんだ薄情っスけどね)


 自虐のような笑みを浮かべて向かうは森の奥に構える()()()()()の拠点。


 そして、ここにきたのは今後の計画のために()()と共に行動する必要が出てきたからだ。


「――――こうして顔を合わせるのはいつ振りでしょうね。〝療々の賢者〟リオーレン」


 唐突に聞こえてきた覚えのある声にリオーレンが目を向けると、そこには大きな()を背に立っている男性の姿があった。


「……お久しぶりです、〝鏡唆の賢者〟サン。もしかしてボクの迎えに?」

「ええ、ここまでくれば人の目もないでしょうし、拠点はまだ先ですからね」


 その正体はルーコ達と敵対している組織の一員である〝鏡唆の賢者〟ソフニル。


 先の騒動では目的故にルーコ達と共闘したが、根本的な部分で敵対したままだ。


 にも関わらず、こうしてそのソフニルと知り合いの如く話している時点で、リオーレンはルーコ達を騙していたともいえるかもしれない。


「いやぁ助かります。正直、歩くのがしんどくなってきたところでしたから」

「それは何より……っと、拠点に移動する前に少々、検査をしても?」

「……ま、仕方ないっスね。ついこないだまで敵対している人達と一緒にいたわけっスから」


 尋ねるソフニルに肩を竦めて返すリオーレン。この発言を切り取っても彼がルーコ達を裏切った事は明白だろう。


「……勘違いしないでほしいのですが、別に貴方を疑っているわけじゃありませんよ。相手はあの創造の魔女や絶望の魔女ですから万が一の可能性を考慮しただけです。それに一緒にいたというなら私も人の事は言えませんしね」

「ああ、先日の一件っスか。ソフニルサンも関わっていたんスね」

「関わっていたというか……まあ、その辺りの話は追々しますよ。それでは調べさせてもらいますね」


 物理的、魔法的にリオーレンの身体検査を終えたソフニルはお待たせしましたと言ってから、自らが通ってきた鏡の方へ身体を向ける。


「…………そういえばボクの存在を皆サンは知ってるんスかね?」

「……貴方が我々の同士だと知っているのは私とストレイドさんだけですよ。スズノさんはともかく、他はその辺りを上手く隠す事の出来ない人達ですからね。迂闊には話せません」

「なるほど……そうなると自己紹介から始めないとっスねぇ…………」

「ああ、そういう事ですか。それなら問題ないと思いますよ。ご存じの通り、一番面倒なガリストさんはもういませんし、スズノさんは話の分かる方、バーニアさんは……単純なのでどうとでもなるでしょう」

「……なんかその間は不安っスね……まあ、考えても仕方ないっスけど」


 ソフニルは知る由もない事だが、リオーレンは生き延びたガリストと顔を合わせており、その際、彼女が何の反応を示さなかった事に疑問を覚えていた。


 だからなんとなく気になり、尋ねてみたリオーレンだったが、ソフニルの返答を聞いて納得し、肩を竦める。


「…………聞かれたついでに私からも質問なのですが、あの少女……ルルロアの傷を()()()()()()()()のは何故ですか?」


 神妙な表情でリオーレンへ問うソフニル。その表情からは込められた感情を窺い知る事はできないものの、こうしてリオーレンに質問をしている時点で、何か思うところがあるというのは読み取れた。


「……単純にボクが治せなかっただけとは思わないんスか?」

「それはないでしょう?〝療々の賢者〟は今代で最も優れた治癒魔法の使い手……死、以外の全てを否定する貴女が治せない筈がない」


 試すようなリオーレンの言葉をソフニルは、ばっさり切り捨てる。


「…………逆に聞きたいんスけど、治して良かったんスか?たぶん、ルーコサンはこれからも障害になってくると思うっスよ」


 小さく溜息を吐き、リオーレンは頭を掻きながらそう返した。


「……それはあくまで貴方の見立てでしょう?未来に絶対がない以上、どう転ぶかは分からない。もしかしたら私達の同士に――――」

「本気で言ってるんスか、それ」

「…………可能性がないと言い切れませんよ。まあ、私としては先日の件で治してくれていた方が楽をできたというのが本音です……と、無駄話が過ぎましたね。皆さんを待たせてますし、行きましょうか」


 嘆息し、首を振ったソフニルが話を打ち切って鏡の先に進むよう促す。交渉事を得意とする彼にしては珍しい話の切り方だ。


 話を打ち切るにしても、相手にそれを気取られないようにするのが彼のやり口だが、そこに気を回す余裕がないくらいに動揺をしていたのかもしれない。


(……もうこれで後には引けないっスね。治療の件もいずれはバレるでしょうし、次に会う時は敵同士っスか)


 ソフニルの後に続いて鏡に向かいながらリオーレンは心の中でそんな言葉を呟く。


 そこにどんな感情が込められていたのか、当の本人以外に知る由もなかった。



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