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〝凡才の魔女〟ルーコの軌跡~才能なくても、打ちのめされても、それでも頑張る美少女エルフの回想~  作者: 乃ノ八乃
第四章 魔女のルーコと崩壊への序曲

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第162話 理由と過去と問われる存在

 

「――――どうしてグロウさんの姿を元に戻してくれたんですか?」


 人間の姿に戻ったグロウの亡骸を見つめながら、私は浮かんだ疑問をそのまま口にする。


 魔物状態の彼と戦っている最中に使わなかったという事はこの魔法はただ視覚的に姿を変えるだけの効果しかないのだろう。


 けれど、使いようによっては有用であろう魔法を敵である私に見られる事になってまでグロウに使う理由がソフニルはないはずだ。


「……どうして、というなら貴女と同じく、ただの自己満足ですよ。悍ましい実験の被害者である彼をせめて人間として弔いたい……おかしな事ではないでしょう?」

「…………確かにおかしな事ではないです……貴方が似たような事をしでかした集団の一員でなければ」


 皮肉を言うつもりはなかったけど、それでもそう返さずにはいられなかった。


 忘れもしないあの街での騒動、増える死体人形に呑み込まれる人々、悲鳴と怒号の飛び交う中で破壊される街並み、あんな出来事を引き起こしておいて今更、そんな感傷じみた事を言うのかと、思ってしまう。


「…………手厳しい……いえ、至極当然の意見ですね……私としてもあれをなかった事にするつもりはありません。目的のために必要でしたからどんな非難でも受け入れるつもりです。しかし、だからと言って意味のない悲劇を見逃す道理はない……まあ、とは言ってみたものの、私個人の理由による部分が大きいですがね」


 何を勝手な事を、と言い返してしまえばそれまでの話。どんな目的があろうと彼らのやった事は許されない事だ。


 けれど、組織としての目的に従事しているとしても、個人の感情としては納得していないのかもしれない。


 だからどうと言う話でないけれど、理由も聞かないで否定するのはどこか間違っているような気がした。


「正直、ただ開き直っているだけにも見えますけど…………その理由というのは今回の討伐に臨んだ事と関係してるんですか?」


 何度も聞いているのにはぐらかされてきた理由を再度、尋ねる私に対してソフニルは軽く溜息を吐いた後、観念したようにゆっくりと口を開く。


「…………そう、ですね。貴方がどれだけ知っているか分かりませんが、私は元々、とある国でそれなりに重要な役職についていました。あの国と比べたら小さなところでしたが……まあ、重役だからという責任はありましたけど、それなりに充実した日々でしたよ……その裏側を知るまでは」


 語られたのは彼が今の組織に属するまでの過去。仕えていた国が裏で今回の件と似たような人体実験を行っていた事を知り、グロウと同じようにそれを暴こうとしたらしい。


 そして彼は国を捨て、とある目的のために今の組織に入った。


 その過程で彼は賢者としての力を振るい、国の裏側で蠢く闇を一掃した……いや、してしまった。


 彼の行動の結果として運営に関わっていた重鎮達はみんないなくなり、国は崩壊。〝鏡唆の賢者〟ソフニルの名はとある国を崩壊へと導いた大罪人として広まり、現在に至るとの事だ。


「――――と、まあ、長く語ってしまいましたが、私が今回の討伐に臨んだ理由も、彼を元に戻した理由も、これで分かったのではないですか?」

「…………自分の境遇と重ねて見て見ぬ振りができなかったって事ですか?」


 短いながらもここまで見てきたソフニルの性格、そして今聞いた話を照らし合わせると、そうとしか思えなかった。


「……まあ、そんなところですよ。ああ、言っておきますが、別に正義感だとか、あの国を救いたいだとか、そんな高尚な気持ちはありません。ただの個人的な憂さ晴らしですから」


 たぶん、ソフニルの語った理由に嘘偽りはないのだろう。


 けど、だからこそ、直接は関係ない国の事情にまで首を突っ込んで憂さ晴らしをするほど、そういう事を毛嫌いしている節のあるソフニルがあんな実験紛いの事を容認している事が納得いかない。


……とある目的のためって言ってたけど、まあ、聞くだけ無駄か。


 話す気があるならすでに話しているだろうし、私が納得いってなかろうとソフニルには関係ない。それに無理矢理聞き出そうとして戦闘にでもなったら困るのは私だ。


「――――さて、これで貴女の質問には答えました。次が貴女が私の質問に答える番です」


 だからこれ以上、追及するのは止めようと思ったその時、今度はソフニルがそんな事を言い出した。


「……別にそんな約束をした覚えはありませんが?」

「確かに約束はしてませんが、ここまで話したんです。答えて減るものでもないでしょう?」

「それは……そうかもしれませんけど…………」


 質問はしたが、勝手に答えたのはソフニルなのだから別に答える義理はない。けれど、そう言われると気が引けてしまうのも確かだ。


 だからまあ、答えられる範囲なら返そうと思った矢先、ソフニルが一旦、間を空けてからその質問を口にする。


「――――貴女は()という存在を知っていますか?」


 飛んできた質問は完全に予想外……いや、別に予想をしていたわけではないけど、それでもあまりに突拍子のないものだった。


「……神って、あの物語とかに出てくるあれですか?」

「……まあ、そうですね。その神の事です」


 物語の中の想像の産物。実在するという記録なんてどこにもないし、そういった確たる資料もない。


 一応、宗教や各地で崇められるものとしての存在はあるものの、実際に見たという記録はない……私の知る限りではあるけれど。


「……本の知識の範囲内なら知ってますよ。人間が作り出した崇めるための偶像、あるいは生物を創ったと言われる上位的存在、お話によって色々変わりますけど、共通しているのは絶対的、圧倒的な力を持っている事……私の認識はそれくらいですね」

「ええ、神についての認識は概ねその通りです……それでは神の存在を見た、または感じた事は?」

「……何ですかその質問は。そんなのあるわけないじゃないですか。そもそもの存在自体、あやふやなのに」


 妙な事を迫真の顔で尋ねてくるソフニルに対して私は思わず怪訝な表情でそう返す。


 ここまでの言動からしいてソフニルはまるで()()()()()()()()()()()()()()()ようだった。


「なるほど、自覚はない、と…………それでは質問を変えます。エルフである貴女が人間の世界に出る時、()()()()()()()()()()に邪魔をされませんでしたか?」

「…………どうしてそれを貴方が知っているんですか。アライアさん達以外に話した事ないのに」


 確かにソフニルの言う通り、外の世界に出ようとした私を長老が妨害……いや、殺そうとしてきた。


 お姉ちゃんが助けに来てくれた事は覚えているけど、途中で気絶してしまったから戦いの顛末までは分からない。


 覚えている範囲で集落を出る際の一連の出来事を話したのは話したが、それは助けてくれたパーティのみんなと修行に付き合ってくれたレイズくらいで、間違っても敵であるソフニルが知っているはずがなかった。


「……やはりそうですか…………いや、しかし、契約と言っていた以上はアレの本体は別に――――」

「何の話をしてるんです?契約って一体なんなんですか?」


 一人納得したように頷きながら、ぶつぶつとなにかを呟くソフニルに対して苛立ちを覚えた私は語気を強めて尋ねるも、答えは返ってこない。


「…………少々喋り過ぎてしまいましたね。そろそろお仲間も駆けつける頃でしょうし、私は失礼します」

「なっまだ話は――――」


 私の言葉なんて聞こえていないかのようにそれだけ言い残したソフニルは街での騒動の時と同様に巨大な鏡を出現させ、あっという間にこの場から消え去ってしまった。


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