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〝凡才の魔女〟ルーコの軌跡~才能なくても、打ちのめされても、それでも頑張る美少女エルフの回想~  作者: 乃ノ八乃
第一章 幼女エルフの偏屈ルーコ

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第17話 お姉ちゃんとお菓子作り

 

 あれから姉と合流した私は、悩み抱えたまま劣等感を呑み込み、集めた材料を持って帰路についていた。


「思ってたよりも材料が早く集まったね~」


 笑顔を浮かべた姉が機嫌良さそうに声を弾ませる。


 確かに姉の言う通り、想定よりも材料探しは早く済んだ。


 私も姉も本から得た知識である程度場所に見当がついていたといのもあるが、一番の要因はやはり魔物からの蜜採取だろう。


 姉の卓越した魔法技術あってこそ、ここまで早く事が済んだのだと思う。


「……これから帰ってすぐお菓子作りを始めるの?」

「うん。今日採った材料全部がすぐに駄目になっちゃうとかはないんだけど、この蜜だけは時間が経つと劣化して味が落ちるみたいだからね」


 蜜の入った皮袋を掲げた姉はそう言うと突然、何かを思い出したようにあっと声を上げて立ち止まった。


「……どうしたの?」


 何か採り忘れた材料でもあったんだろうかと思い、尋ねたところ、姉は困ったような笑みを浮かべる。


「えっと、その、お菓子の作り方は大体覚えてるんだけど……細かい部分が分からないから、あの本を見ながらじゃないと厳しいかなって」

「あーそういうこと……」


 確かにお菓子、あるいは料理作りとなれば細かい部分も必要となってくるだろうし、おそらく私も姉以上に内容を覚えていないので、本を見ながらの方が確実で早い。


「なら私が取ってこようか?」

「いいの?じゃあお願いしようかな」


 了承を得て、じゃあ先に帰って準備しててと言ってから一旦、その場で姉と別れて本を取りに書庫の方へと向かう。


あそこで読む時間はないけど、せっかくだから二、三冊、適当に持って帰ろうかな。


 普段……というか、入り浸っていた頃はわざわざ持って帰ってまで読まなかったけど、最近は読めなかったからこの機会は丁度良かった。


「……あれ?長老?」

「ん?おお、ルーコか。こんな日が高い内に会うのは珍しいの」


 書庫へと向かう道中、ゆっくりと杖をついて歩く長老とすれ違った。


「珍しいはこっちの台詞だよ。そもそも長老は出歩く事自体が少ないんだから」


 基本的に長老は家から出ない。たまに散歩くらいなら出るようだが、それも朝早くか、夜遅くの二極端で、こんな日中に出歩くところは見た事がなかった。


「ふむ、最近はそうでもないぞ?お主らの特訓や狩りの様子をよく見に行っておるしの」

「そうなの?それにしては姿を見かけないけど……」


 いくら特訓や狩りに集中しているとはいえ、長老がいたのなら流石に気付く筈だ。


「それはそうじゃろう。邪魔するのも悪いと思って気配を消しておるからの。主が見つけられなくても無理はない」

「ぬぬ……そう言われるとなんか悔しい……」


 まるでまだまだだ、と言われているような気がしてむっとなったが、相手がこの集落最高齢のエルフである長老だという事を考えれば、それも仕方ないと思ってしまう。


 なぜなら直接使っているところを見た事がなくとも、積み重ねた年月がそのまま魔法の腕に直結しているであろう事は容易に予想がつくからだ。


「ほほっ、そんなに気にする必要もあるまいて。主が、とは言ったが、他の者達も儂がいることに気付いておらなんだ。まあ、唯一、主の姉だけは気付いておったようじゃが」

「……お姉さま凄すぎじゃない?」


 狩りに出るエルフは一応、集落の中でも腕に覚えのある者達ばかりだ。


 そんなエルフ達が気付けなかった長老の存在に唯一、気付いた姉は、もはやこの集落で一番の実力者と言っても過言ではない気がしてきた。


「そうじゃの。儂も長い間生きておるが、主の姉ほどの才を持つ者は他に見た事がない」

「…………」


 私の言葉に頷いた長老は感慨深そうに遠くを見つめる。


 長老の年齢を考えると、他に見た事がないという言葉は姉がどれだけ凄まじい才を秘めているのかを如実に表していた。


「……ふむ、少し話し過ぎたかの。主もどこかに行く途中だったたのじゃろう?」

「え、あ、うん……」


 他人(ひと)の口から語られる事で改めて姉の凄さを認識した私は呆然としてしまい、長老への返答が遅れてしまった。


「……まあ、そう気にする必要もあるまいて。姉だけでなく主の才も相当なものじゃし、これから次第でどうとでも伸びる筈じゃ」

「……そう、だね。うん、ありがとう」


 私に気を使ったらしい長老が慰めに似た言葉をくれるも、そこには姉との埋められない差があるというのをどうしても感じてしまう。


自分でも分かっていたけど、誰かに言われるとやっぱりくるものがあるなぁ……。


 どこか鬱屈した気持ちを抱えて長老と別れた私はそれを引きずったままお菓子作りについて書かれている本を取りに書庫へと向かった。






 書庫から本を持ち出して余計な事を考えないよう駆け足気味に家へと戻り、準備をしているであろう姉のいる炊事場へと足を運ぶ。


「ただいまー」

「あ、ルーちゃん。お帰りなさい」


 材料を丁寧にすり潰していた姉は、私が声を掛けるとその手を止めて駆け寄ってきた。


「はい、これ」

「うん、ありがと。これで本格的に始められるよ」


 姉に本を渡してから水の張った桶で手を洗い、隣に立って現状を確認する。


「えーと、これは今何をしてる最中?」

「ん、今は採ってきた材料を乾燥させて粉末状にしてるところ」


 受け取った本に目を通しながらそう答える姉。


 なるほど、確かそうして出来た粉を水で練って生地にするって本に書いてあった気がする。


「あれ?でもこんな短時間で乾燥って……」


 植物を乾燥させようと思えば、日の当たる場所で数日は干さなければいけない筈だが、私が本を取って帰ってくるまでの短い時間でそれをするのは流石に無理があるだろう。


「この本に書いてある魔法を使ったんだよ~」

「……その本にそんな魔法載ってたっけ?」


 内容をうろ覚えとはいえ、魔法についての記載があれば記憶に残っていてもおかしくないのに全く覚えがなかった。


「載ってるよ?ほらここ、植物を粉にする説明のところ」

「……どこ?」


 姉の指差す箇所を見ても魔法について書かれているようには見えない。


 記載されているのは粉にしていかに扱うかの工程で、乾燥についても自然乾燥の仕方に触れているくらいだ。


「ここ、ほらよく見て?」

「んー……あ!そういう……」


 再度、姉の指差す方を目で追い、ようやくどこに記載があるのかに気付いた。


「……この書き方で()()()なんて普通気付けないよ」


 加工する工程を絵を交えて説明しているその部分は文章の配置的にどうしたって横から読んでしまうような構造になっている。


 まして私がこれを読んだのは興味のある分野の本を読み終えて他に読むものが無くなった頃で、自分の中ですでにこういう本はこう読むものだという先入観ができていたため、なおさら縦読みなんて思いつかないだろう。


「そうなの?私は最初読んだ時に横からも縦からも読めるな~って気付けたけど……」

「……お姉さまは本を読み慣れてないから気付きやすかったのかもね」


 不思議そうに首を傾げている姉へ呆れ混じりの言葉を返す。


 気付いた姉にもだが、なによりこの仕掛けを作った作者の悪戯心に対して、どこかしてやられた気持ちが湧いてくる。


「確かに言われてみればそうかも……っと、話してばかりもいられないね。そろそろ進めよっか」

「ん、分かった。私は何からすればいい?」


 そう言って再び本へと目を落とした姉に指示を仰ぐと、茸を細かく刻んでおいてと言われたのでしまってある解体用の刃物を取り出し、木の板の上に乗せる。


「……これって魔法を使った方が早いんじゃないかな」


 採ってきた茸の約半分を刻んでからふと、そんな言葉が口から漏れてしまった。


 というのも、この刻むという作業は全体的な量の多さも然る事ながら中々に骨が折れる。


 これをわざわざ手作業でするよりも風の魔法なりを使って刻んだ方が疲労も少なくて済むし、効率も良いように思う。


「んーどうかなー?それは結構難しいと思うけど……」


 私の呟きに姉は渋い表情を浮かべる。


 結構良い考えだと思うんだけど、どうやら姉的には気が進まないらしい。


「大丈夫。余計な物を切らないための制御は難しいかもだけど、風の魔法は得意だからその辺も問題ないよ」

「あっルーちゃんちょっと待っ……」


 姉が制止するより先に私は数個の茸を空中に放り投げて魔法を撃ち放った。


送風の連傷(ブロテェクリーチ)


 宙を舞う茸の周りを鋭さを持った風が球体状に覆い、微塵に刻んでいく。


「ほら、大丈夫だったでしょっ……!?」

「きゃっ!?」


 上手くいったと思ったのも束の間、役目を終えた球体状の風が弾け、細かくなった茸が炊事場中に飛び散った。


「ぺっ……うぇっ……」

「うぅ……髪の毛にまでべったりついてるよ~……」


 炊事場中に飛び散った破片は当然、私と姉にも降り掛かり、茸から染み出た汁が髪や服にまで付着していた。


「だからちょっと待ってって言ったのに~……」

「……ごめんなさい」


 心の底から謝り、姉からの批難の視線を甘んじて受ける。


 おそらく姉は魔法を使えばこの惨状になるという事を分かっていたのだろう。


 というか、むしろどうして私はこうなる事が予測出来なかったのか。少し考えれば誰だって気付ける筈なのに。


「……やってしまった事は仕方ないけど、今度からは魔法が引き起こす事象だけじゃなく、結果にも気を付けてね」

「はい……」


 もっともらしいお説教にしょぼくれる私を見かねてか、姉はそれ以上なにも言わず、散らばった茸の破片を片付け始めた。



 粗方、炊事場内の散らばった茸を片付け終えた私と姉はそのままお菓子作りを再開していた。


「そうそう、細かく微塵切りにした茸を布で(くる)んできつく絞ってさっきの汁を抽出するの」

「ぐむむ……こ、こんな感じ……?」


 言われるがまま布に包んだ茸を力いっぱい絞り、お椀に汁を溜めていく。


 さっき私が飛び散らせた分が減っているとはいえ、あれだけの量の茸から小さなお椀の半分にも満たない量しか採れないとは思わなかった。


「っは~……もう無理……力が入らない」

「お疲れさま。うん、このくらいあれば充分かな」


 大きく底の広い器を取り出した姉はそこに乾燥させた粉と少量の水を加え、木べらを使ってかき混ぜる。


「ルーちゃん、そこに置いてある卵を割って入れてくれる?」

「ん、分かった」


 言われた通り、卵を手に取って姉がかき混ぜている器の中に割り入れた後でふと、小さな疑問が生まれた。


……この卵、いつの間に採ってきたんだろう?


 普通の人間達の町や村ならいざ知らず、ここの集落で卵を手にいれようと思えば、森に住む獣、あるいは魔物の巣から採ってこなければならない。


 私が本を取りに行っている間に行くのは流石に無理があるだろうし、と考えたところで姉が気付いたらしく、その疑問に答えてくれた。


「この卵はさっき茸を探してた時に見つけたんだよ」

「さっき……?でも卵なんて持ってなかったと思うけど……」


 合流した時に姉が持っていたのは大量の茸だけだった筈だ。


「うん、だって卵は別の袋に入れて腰から下げてたからね。ルーちゃんが気付かないのも無理はないよ」

「……腰から下げてたって事はそのままあの魔物と戦ってたの?」


 それを聞いていつ採ってきたという疑問は解消したが、かわりにもう一つ、新たな疑問が生まれる。


 あの植物型の魔物との戦闘で姉は強化魔法を使って激しく動き回っていた。


 袋に入れていたとはいえ、そんな中で簡単に割れてしまう卵が無事だった事が不思議でならない。


「そうだよ?……ああ、もしかしてどうして卵が割れなかったのかってこと?それならきちんと卵が割れないよう魔法で周りに空気の壁を作ってたからだよ」

「魔法……そっか、そういう……」


なるほど、確かに風の魔法でそういう用途に使えるものがあった。


 魔法で卵を保護しながらさらに戦闘の中でも魔法を使うのは中々に難易度が高いが、姉ならそれくらいは簡単に出来るだろう。


「よし、それじゃルーちゃん、今度はさっきの絞り汁をここに入れてくれる?」

「え、あ、うん」


 私が小さなお椀を取って中身を器に移し入れると、姉は器用に木べらを動かして大きく混ぜ合わせていく。


「……あ、なんだか少し粘りけが出てきた」


 混ぜ合わせてから少し時間が経った頃、器の中身が全体的に黄色くなってもったりとしてきたのが見てとれた。


「うん、こうなってきたらもう少しで生地の準備は終わりっと」


 そこからさらに混ぜ合わせていると、さらに粘りけを増した中身は半固形ともいえる状態にまでなった。


「よっと、これで後は焼くだけだね。ルーちゃん、石の器を取ってくれない?」

「石の……あ、あった。はい」


 手渡された石の器にかき混ぜた中身を移し、表面が均等になるように木べらで調整した姉はそれを備え付けられた釜戸の中に入れて魔法で火を起こす。


「生地はこれでいいとして、今度は上に塗るものを作っていくよ」


 そう言って姉は新しく器を用意すると台の下を開け、蓋のしてある容器を取り出した。


「それは?」

「んー?これは獣の乳だよ。魔法で凍らせて保存してたの」


 姉は蓋付きを容器を火を起こした釜戸の方に近付けてゆっくりと中身を溶かし始める。


「こうやって溶かした乳を器に入れて汁を絞り終わった茸を少しと今日採った蜜を加えてふんわりするまでかき混ぜれば……」


 ここまでくると特に私のやる事はないため、邪魔にならないよう姉が持っていた本を預り、てきぱきと作業をこなしていくその姿をただぽけ~っと見つめていた。


「ん、いい感じだね。ルーちゃん、ちょっと味見してくれる?」

「え、あ、うん」


 出来上がったふわふわできめ細かいそれを指で掬い、恐る恐る口へと運ぶ。


「━━っ~!?」


 含んだ瞬間、口の中に優しい甘さと滑らかな舌触りが広がり、美味しさのあまり咄嗟に声が出なかった。


「どう?一応、本の通りに作ったから失敗はしてないと思うんだけど……」

「……物凄く美味しい、今まで食べたどんなものよりも」


 味の余韻が残っている内に感想を求められ、私は半ば放心状態答える。


 正直、ここまで美味しいものが出来るなんて思いもしなかった。


 前に長老の家で食べたお菓子なんて比べ物にもならない。


 こんなに美味しいなら魔物と戦ってでも作ろうとする気持ちが分かる気がする。


「ふふ、それなら良かった。じゃあ、後は生地が焼けたらこれを塗って、飾り付け用の果物を盛り付けたら完成かな」


 私の反応に満足したらしく、姉は嬉しそうに目を細めて仕上げの準備に取り掛かり始めた。




 程なくして生地が焼き上がり、香ばしい匂いが炊事場いっぱいに広がった。


「んー……良い匂い!焼き上がりは完璧だね」


 火傷しないよう料理用の手袋を()めた姉は釜戸の中から焼き上がった生地を取り出し、準備の段階で用意していた平べったい石皿にひっくり返して乗せる。


「こんなに膨らむんだ……」


 釜戸に入れる前と比べて倍以上の大きさになった生地をまじまじと見つめていると、姉が微笑みながら木べらとふわふわの入った器を手渡してくる。


「私は飾り付け用の果物を切り分けるから、ルーちゃんは生地にこの()()()()を塗ってくれる?」

「分かった……え、くりぃむ?」


 聞き慣れない単語に思わずそのまま聞き返してしまう。


「うん、この白いふわふわはくりぃむって名前なんだって。この本に書いてあったよ?」

「あ、そうなんだ。全然覚えてなかった」


 作り方の部分はあまり読み込んでなかったとはいえ、全く聞き覚えがない項目があるとは思わなかった。


「まあ、作り方の最中に少し名前が出てくるくらいだから覚えてないのも無理ないかも」

「……そうだね。分かった、それじゃあ私はこのくりぃむを生地に塗ればいいってことね」


 姉からくりぃむの入った器を受け取り、木べらを焼き上がった生地の上に満遍なく塗っていく。


味は変わらないけど、折角だから見た目も綺麗にして、と……。


 塗った痕がつかないよう均等にし、贅沢にくりぃむを塗りたくる。


「……これくらいでいいかな」


 まだ少しくりぃむは残っているものの、これ以上塗ると垂れてきて見映えが悪くなってしまうし、折角の生地の味もくりぃむに上書きされて分からなくなるかもしれない。


「どう、ルーちゃん。そっちは終わった?」


 飾り付け用の果物を切り終えたらしい姉が私の手元を覗き込んでくる。


「お~、綺麗に出来てるね。流石ルーちゃん!」

「……別にこのくらい普通でしょ。それより早く果物を盛りつけた方がいいんじゃない?」


 むやみに褒めてくる姉から顔を背けつつ、切り終えた果物を盛りつけるように促し、お菓子の完成を待った。


「━━ここをこうして、ここに乗せれば……完成!」

「おおー……」


 完成したお菓子の出来栄えに思わず感嘆の声が上がる。


 円状の生地に綺麗に塗りたくられたくりぃむ、そしてその上には色とりどりの果物が散りばめられており、仄かに甘い香りが漂ってくる。


「美味しそう……」

「……早速切り分けて食べよっか」


 そう言って姉は解体用の刃物を取り出し、出来上がったお菓子を六等分に切り分けてその内の二つを小皿へと移した。


「……なんか切り分けたのがもったいない気がする」

「だね~、でも食べるためには仕方ないよ」


 食卓を挟んで向かい合うように座った私と姉はそんな事を言いながらも、それぞれ一口お菓子を頬張る。


「「━━ん~っ!美味しい~!!」」


 その瞬間、私と姉は奇しくも声を揃えて全く同じ感想を口にした。


「外側にたっぷり塗られたくりぃむも甘くて美味しいし、中の生地も香ばしくてふかふかで、それに負けないくらい美味しい」

「うん、上に乗ってる果物の甘酸っぱさも絶妙でくりぃむと生地に合ってるね」


 互いに感想を口にしながら夢中になって食べ進め、気付けば結構な大きさだったお菓子を二人で全部平らげてしまっていた。


「は~美味しかった~」

「ね~流石にお腹いっぱいだよ~」


 二人揃って椅子にもたれ掛かり、満足げにお腹を擦る。


 まさかお菓子だけでここまで満腹になるとは思っていなかった。


「んー……今日はもう晩御飯はいらないかな~」

「私も~」


 私も姉もそこまで大食らいな方ではないため、時間的にここから晩御飯までにお腹が空く事はまずないだろう。


……朝早く起こされた時は最悪だと思ったけど、何だかんだで良い一日だったなー。


 色々と思うところはあったものの、最終的にこうして美味しいお菓子も食べられた。それで満足出来たのだからこれ以上は何も思うまい。


 幸福感と満腹感からくる眠気を受け入れつつ、ぼんやりとそんな事を考えてゆっくりと瞼を閉じた。


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