二周年記念 私のささやかな願い
私の妹は可愛い。
目に入れても痛くないという言葉があるけれど、本当にそれくらい可愛い。
この前まで、少し避けられていたけど、最近……魔法の練習に付き合い始めた頃から、一緒に過ごす時間が増えた。
「――――お姉さまは本当に規格外だよね。魔力量も、技術も、魔法も、何一つ敵う気がしない」
いつだったか、練習の最中にルーちゃんがそんな事を口にした。
確かに私は他のエルフ達と比べても、魔力は多いし、魔法の腕だって自信はある。
でも、ルーちゃんだって凄いところはいっぱいあると思う。
私はルーちゃんみたいにたくさんの本なんて読めないし、難しい言葉も知らない。
それに魔力操作や発想は私よりもルーちゃんの方が凄い。
なにせ、ルーちゃんの使う魔法はほとんどが独自に創り上げたものばかり……私もいくつか魔法を創った事はあるけど、ルーちゃんみたいに即興で創ったりはできないし、あんなに多種多様な想像はできない。
特にそれが顕著なのはあの『魔力集点』という魔術だ。
魔力をかき集めて一気に爆発させて魔力の絶対量を拡張するなんて私には思いつく事も、まして、それを再現する事もできない。
危険な部分もあるけど、あれはルーちゃんだけの……唯一無二の魔術だ。
「――――でも、ルーちゃんはそれを凄いとは思わないんだよね……卑屈ってわけじゃないんだろうけど……」
私はルーちゃんのお姉ちゃんだけど、あの子の気持ちが全部分かるわけじゃない。どちらかと言えば、分からずに傷つけてしまう事が多いし、嫌がるルーちゃんに構い過ぎて煙たがられることだってある。
まあ、それはルーちゃんが可愛い過ぎるのが悪いとして、つまるところ、私とあの子は違うという事だ。
私から見たルーちゃんは賢くて、可愛くて、ちょっと捻くれてるところもあるけど、そこもまた可愛くて……そして、絶対に折れない心を持っている強くて優しい自慢の妹だ。
対して、ルーちゃんは私の事を天才だと言うけれど、私自身、自分の事を天才だなんて思ってない。
たぶん、ルーちゃんから見た私は天才で、何でもできて、ちょっと構い過ぎなお姉ちゃん……少しは尊敬されてたら嬉しい……かな?
でも、本当の私は天才じゃないし、何でもはできないし、たまに抜けてるような行動はしちゃうし、ルーちゃんが一緒にいないと寂しくて耐えられないような弱いエルフ……それが私だ。
だけど、そんな弱さをルーちゃんには絶対に見せない…………だって私はお姉ちゃんだから。
「――――お姉さまー今日の特訓はお休みにするのー?」
物思いに耽っている間に思いの外、時間が経っていたみたいで、一向にこない私を呼ぶ、ルーちゃんの声が聞こえてくる。
「――――もちろん、今日もやるよ~今、用意していくから待っててルーちゃん」
外の世界に出たがってるルーちゃんはいつかここを旅立っていく。
いつか私も妹離れをしなければならないのだろうけど、少なくともそれはまだ先の話だ。
だから……今だけは大好きなルーちゃんと一緒に過ごすこの日々を大切にしたい。
きっと、別れる時、私は泣いちゃうと思う。もしかしたら行かないでと駄々をこねるかもしれない。
けれど、最後には笑顔でいってらっしゃいって送りだして、いつか帰ってきた時におかえりって言ってあげたい。
それが今の私のささやかな夢だ。
読んでくださる皆様方のおかげで無事2周年を迎える事ができました。
ここまで書き続けてきた中で、思い通りにいかない事もたくさんあり、折れそうになる事もありましたが、それでもここまでこれたのは皆様方のおかげです。
これからもルーコの物語をよろしくお願いします。
本当にありがとうございます!




