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〝凡才の魔女〟ルーコの軌跡~才能なくても、打ちのめされても、それでも頑張る美少女エルフの回想~  作者: 乃ノ八乃
第三章 魔法使いのルーコと絶望の魔女

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エイプリルフール企画 ルーコの夢想外伝② エルフの美少女魔法使い、完成に喜ぶ

 


 そこは人里離れた山にひっそりと建てられた小屋の中。散らかった紙切れや本が散乱する室内で一人の少女が机に向かって文字を走らせていた。


「――――っ出来た~!!」


 少女は数式のような文字の羅列を書き上げると勢いよく立ち上がり、弾けんばかりの笑顔を咲かせる。


「ふ…ふふふっ……やっぱり私は天才ですね!この魔術さえあればこれからの馬鹿みたいに長い人生も退屈せずに済みそうです!」


 他に誰もいない山小屋の中で自画自賛する少女…いや、少女というのは多少の語弊があるかもしれない。なにせ彼女はその幼い外見とは裏腹に(よわい)五百を越えるエルフなのだから。


「さて、魔術も完成した事ですし、早速準備に取り掛かりましょうか」


 そう言うと彼女は部屋の隅にある大きな鏡の前に移動する。


「ふむ、やっぱりいつ見ても私は美少女ですね……」


 ぱっちりとした紫の瞳に白く透き通った肌。前髪はまっすぐ切り揃えられ、腰まで伸びた黒髪の毛先だけがうっすらと白い。そして何より特徴的なのはエルフ特有の尖った耳だろう。


「とはいえ、この耳はどうにかしないと私がエルフだと知られてしまいます」


 長い髪の毛でも隠しきれないその耳を見れば彼女がエルフであるという事が一目でわかる。別段、エルフだからどうという訳でもないが、物珍しさから奇異の視線を向けられるのが煩わしい。


「……いっそ切り落としましょうか」


 物騒な事を口にした彼女の手にはいつの間にか、短刀ほどの長さがある真っ黒な杖が握られていた。


「流石に刃物で片方ずつ落とすのは痛そうなので魔法で……えいっ」


 黒塗りの杖が振るわれると同時に彼女の尖った耳が血を撒き散らしながら宙を舞う。


「っ~~~~!?」


 両耳に焼けるような激痛が走り、彼女は声にならない叫び声を上げた。当たり前の事だが刃物であれ魔法であれ耳を切り落とすなんて真似をすれば灼熱の痛みを味わう事になるし、下手をしたらその痛みと出血でショック死するかもしれない。


(痛い痛い痛い痛いっ~~!?こんなに痛いなんて聞いてないっ!安直に耳を切り落とすなんて私の馬鹿!!)


 痛みに悶えながら彼女は自分の浅慮を呪う。そもそも浅慮以前に常人は必要に駆られたからといって躊躇なく自分の耳を切り落としたりはしない。


「痛っ……は、早く……いや……我慢……」


 一刻も早く治したいのは山々だが、ここで普通に治してしまうと何のために痛い思いをしたのかわからなくなる。


「ふ……ふぅ……落ち着いて……出来る……私は天才……」


 深呼吸で激痛を誤魔化しつつ、彼女は杖を振るって傷口を治し始めた。


「うぅぅ……痛い……」


 元の通りに治癒するだけなら一瞬で終わるものの、構造を作り替えながら治すとなるとどうしても時間がかかってしまう。つまり、彼女が望む結果を得るにはしばらくの間、激痛に耐える必要があった。


「……………………ふぅ……やっと終わりました」


 数十分に及ぶ死闘の末、治療を終えた彼女は額に玉のような汗を浮かべながら安堵のため息を漏らす。


「さてと……どうしましょうか」


 辺りに飛び散った血と落ちている自分の耳を見て首を捻る彼女。飛び散った血に関しては魔法で片付ければ済むのだが、切り落とした耳の処理はどうしたものかと悩む。


「……美少女エルフの耳って文言でも付ければ高く売れそうですけど」


 世の中、売ろうと思えばどんなものだって売れる。この耳もその手の商品を扱う商人に持っていけばびっくりするような値段で売れるかもしれない。


「…………やめておきましょう。切り落としたとはいえ、私の耳が変態の手に渡るなんて考えただけでもゾッとしますし、そういう人達とはお近づきになりたくありませんからね」


 その手の商品を扱う商人もそれを購入する変態もおおよそ、まともではないだろう。そんな輩と関わりあってまで大金を得ようとは思わない。


「とりあえずこの耳は凍らせて保存するとして、部屋を片付けてしまいますか」


 魔法で切り落とした耳を凍らせ、散らばった血を取り除いて彼女は紙の束や本を棚へとしまっていく。


「……こんなもんですね。後は食料や必需品を買い出しにいけば準備完了ですよっと」


 先程まで血塗れの殺人現場にしか見えなかった惨状を魔法であっという間に綺麗にした彼女は凍らせた耳をテーブルの上に置いてあるポーチの中に放り込んだ。


「よし、これで腐る事もないでしょう。さっそく町の方へ買い出しにいきますか」


 耳を放り込んだポーチを手に取り、服を着替えた彼女は鼻歌を歌いながら山小屋を後にした。




って、ちょっと待ってください。それ切り落とした耳を凍らせてポーチに入れただけで何も解決してないじゃないですか!


――あのポーチは私が魔法をかけた特別製で中に入れたものの時間が止まります。だから私の耳は腐らずに凍ったままでなんですよ……ほら?


ちょっ、そんなもの見せないでくださいよ!わかりました、わかりましたから……やめ、近付けないで!


――近付けるなと言われると逆に近付けたくなるのが人の性ですよね。ほらほら~


やめてくださいってば!ほ、ほら続き!続きは?買い出しに出掛けてからどうしたんです?


――む、続きが気になると?仕方ありませんね……ではからかうのはこの辺にしておきますか。



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