15日目/前途多難な家族
冒頭から朗報(?)です。
続きを書きたくて、ブックマークや評価をお願いしていましたが……
残念な事に目標値には届きませんでした。
ですが、もう1話だけ外伝を書いている途中です。
完成次第、またアップしますのでよろしくお願いします。
ここまで読んでくださった方。
ブックマークや評価をしてくださった方。
ありがとうございました!!
●三枝屋敷
三枝若葉は、木陰に入って休んでいる。
年季の入った樹木を背もたれに、半壊した屋敷の風景を眺めている。
その横には、仰向けに横になっている彼の叔父。
冷やしたタオルが頬に当てながら、若葉に問う。
「若葉。お前、この幽霊屋敷で暮らすのか?」
「え……うん、そうだけど?」
「夜な夜なラップ音とか、ポルターガイストとかが起きる屋敷に?」
「あー、うん。そうだね」
「怖くないのか?」
「たぶん、怖い。けど、別に怪奇現象が怖いってわけじゃない」
「どういう意味だ?」
「うーん……なんともいいづらい……」
言葉を詰まらせる若葉。
これから降りかかるであろう災難に、つい怯えてしまう。
叔父はその様子を微笑が漏れる。
「まぁあんな美人の恋人がいれば1人暮らしもバラ色だろうな」
「だから、壱号さんは恋人じゃないって」
「嘘つけ」
「嘘じゃない」
「じゃあ一体、彼女はお前のなんだよ?」
「彼女は……その……」
「ほら、やっぱり恋人だっていうのが恥ずかしいんだろ?」
「違うって……彼女は、その、家族……みたいなモノで……」
「カゾクぅ?」
「うん。母さんのように温かくて、姉さんのように甲斐甲斐しくて……それで厳しい……そんな感じかな?」
「あーつまり、マザコンプレイ? いやバブミってやつか?」
「もう1発いる?」
「ああ、悪い悪い。調子に乗った」
しかしな、と叔父。
「彼女にどんな事情があれど、お前が自分で決めたんだ。しっかりやれ」
「しっかり、やる……?」
「ああ。男がコレって決めたんだ。経緯はどうあれ、しっかり最後まで面倒見ろ。自分の尻ぬぐいができてこそ自立できてる証拠だ」
「面倒……尻ぬぐいか……」
「まぁお前も奥さんや子供ができれば、わかるさ。家族の重みってやつがな」
叔父の語る、家族の重み。
それは壱号や弐号の家政婦達にも通ずるのだろうか。
照れながらも、彼女達を家族だと思いたい若葉。
彼女達の存在意義を全うするため、ハリボテの主従を組む若葉。
自身の矜持を胸に、互いに理想を求め合う。
家政婦も背負えない者は主人と名乗れない。
主人の生活面を守る事もできない者は家政婦ではない。
理想の主人たれ。
理想の侍女たれ、と。
「うん。それはなんとなく、理解できる気がするよ」
怯えた心を一新するかのように。
若葉、精一杯に笑い飛ばした。
××××× ××××× ×××××
案外、叔父はあっさり帰った。
本当に若葉を心配しての行動だったのだろう。
最後、若葉の元気そうな顔を見て微笑んでいた。
逢魔が時の中。
弐号の長い陰影が、若葉に近寄る。
「あのーご主人様」
と、木の枝に足をかけ宙づりになる。
逆さになった弐号の顔と目が合う。
「なんで叔父様は、この屋敷を『幽霊屋敷』って呼ぶんですか?」
「オレが来る前から、女性の悲鳴やラップ音、夜中に火の玉も出るかららしいよ」
「そういう事ですか」
気づけば、壱号が3歩後ろに佇んでいた。
音もなく、近づくのはよして欲しい。
淡々とした口調で、メガネの縁を持ち上げる壱号。
「ご主人様。1つ訂正がございます」
「どういう訂正か、聞かせてくれる?」
「はい。夜な夜な聞こえる女性の悲鳴は弐号のカラオケが原因です」
「は?」
「えへへ。一時期、壊れた音楽プレイヤーを拾ってシャウト系を練習してたんです!」
「そして、ご主人様も体験されたラップ音――それは弐号の寝相が悪くて壁を叩いたせいです」
しまいには、とため息交じりの壱号。
「火の玉も、深夜、夜食を食べるために灯した蝋燭を消し忘れているだけです」
「…………つまり?」
「ええ。噂される怪奇現象とは、全て弐号が原因なのです」
「それを、オレや住民に見られていただけだと?」
はい、と澄ました声で答える、壱号。
反省の色もない、弐号。
そして当面、主人として頑張る気力も失せた若葉。
彼らの前途多難な暮らしは、まだ始まったばかりだった。
ここまで読了ありがとうございました!
繰り返しになりますが……
最初から読んでくださった方も。
半ば飛ばしてでも読んでくださった方も。
最後の最後、この話を読み終わっていただけただけで感謝です。
こんな稚拙で、安直な物語を読んで下さり、ありがとうございました!!
晴れ晴れとしている反面。
内心、食事をゴチソウするといって……
生焼けや焦がしたモノを出した気分です……
料理も訓練、何事も訓練です。
今後に、この反省を生かしていきたいと思います!!