15日目/正当な鉄拳
ラストスパートはコメディタッチです!!
●三枝屋敷
あれから数日の間、三枝若葉が驚いた事が2つある。
まず1つ目。
屋敷全体の修繕費についてだ。
その手の修理業者に見積もりを出してもらった。
屋敷の荒れ果てた姿、その残骸。
誰もが、頭をかきむしりながら困り果てていたのが印象的だった。
なんとか請求予定額を試算してもらうも。
若葉、その額に顔が青ざめた。
ゼロが4つどころではない。
7つ、8つと大盤振る舞いである。
その左端にも、数字がついているのだから目も当てられなかった。
初めて見る巨額の修繕費。
業者も、リホームした方が早いと断言したくらいだ。
無い袖は振れない。
一介の学生にそんな大金を払えるはずもない。
だが、その問題を先代の遺産が解決してくれた。
それが2つ目だ。
三枝厳十郎が残した特許料や遺産は、それを上回るものだった。
壱号いわく。
先代は金に執着がなかったらしい。
そのため、研究費で使いきれなかった資金。
また資産運用なども、全て壱号が管理していたとの事。
法的にどんな魔法を使ったのだろうか。
若葉、あまり深入りはしないように心がけた。
挙句、迷わず先代の遺産を消費した若葉。
廊下に飾られた、芸術品や壺などはともかく。
また若葉達が住める場所くらいは整理しないといけないだろう。
そして目下、三枝屋敷は修繕の真っ最中である。
××××× ××××× ×××××
修繕業者が忙しなく、屋敷を動き回る。
作業服を汚す男達が、庭を駆け巡る。
屋敷の隅に停めたトラック。
その荷台に、次から次へと廃材が積まれていく。
そこにぽつんと、若葉の叔父が正門に立っていた。
唖然。
例えるならば、それしかない。
屋敷の怪奇現象に怯える甥。
あれから2週間ほど経ったろうか。
それで心配してきてみれば、どうだろう。
正門、壁、庭や屋敷がボロボロ。
ロボットや恐竜でも暴れたのだろうか。
この屋敷だけハリケーンが巻き起こったのか。
なぜ、こうなってしまったのか。
疑問が頭を埋め尽くしていた。
屋敷の様子を庭で眺めていた若葉。
叔父に気づくと、バツの悪そうな顔になる。
「……あ……叔父さん……こ、こんにちは?」
「『こんにちは?』じゃない。若葉、どういう事だコレは?」
「あーコレ……ね……あのー……リホーム中、かな?」
「なんでだよッ!?」
いくら問いただしても、明確な答えが返ってこない。
「こないだ電話でポルターガイストだって騒いでたから、心配してきてみれば……お前、何をしてるんだ!?」
「――ご主人様、お客様ですか?」
と、わざとなのか天然なのか。
怪訝な顔をした壱号が近寄ってきた。
主人に助け舟を出したい気持ちがあったのだろう。
だが、それは悪手だ。
「あはは、そうだなんだ。この人はオレの叔父さん」
と、かたまった表情を壱号に向ける。
「まぁそうでしたか。これは失礼いたしました。私、三枝家に仕える家政婦の壱号と申します」
お見知りおきを、と会釈も付け加える壱号。
所作は完璧だが、このタイミングは不味い。
なぜなら、叔父は壱号が人外だと知らないからだ。
――実は彼女は爺さんが改造した家政婦で。
と、気軽に話せるわけもない。
言い訳を考えあぐねるうちに、叔父がいやらしく笑う。
「おい、若葉……ちょっと……」
「へ?」
叔父の腕が若葉の首に絡む。
顔を突き合わせて、蚊の鳴くような声で話す叔父。
「……お前、いくらメイドが好きだからって性癖をオープンに出す事はないだろ……?」
「は?」
「あれだろ、お前が1人暮らししたいってのもカノジョが理由なのか?」
「カ、カノジョ?」
「可愛い娘じゃないか。ちょっと年上だが、静かなお前にあれくらいがいいな、うん」
「お、叔父さん?」
「ああ、わかる。叔父さんも1人暮らしした時、ヘルスやバーで会った女を連れ込んだもんさ」
「…………」
「そんで、他人の目なんか気にならないから、ああいうプレイしたり、こういうプレイしたりして楽しんだもんさ」
「………………」
それにこんな屋敷だったら格別だろうな、と叔父の目が陶酔している。
正直、タバコ臭いし、その表情も気持ちが悪い。
変に誤解されても嫌だが、そんな性癖も嫌だ。
――ウチの家政婦をそんな目で見るんじゃない。
と、強く握りしめる拳。
爪が深く、食い込む。
「――お姉様? どうかされたんですか?」
またも間が悪く、弐号が現れる。
首を傾げながら、若葉と叔父を見つめてきた。
「おおぉぉ! まさか! まさか2人もいるのかッ!」
鼻息が暑苦しい叔父。
もう、説明する気も失せた若葉。
「若葉ッ! お前!? まさか男の夢である、さんぴ――」
「――黙れ、クソオヤジッ!!」
思いっきり。
腰あたりの拳に勢いをのせて、頬を打ち抜いた。
そろそろこの作品も完結です。
そこで皆さまにお願いがあります!!
この作品の結果として、自分の反省に繋がるので
ブックマークだけではなく、コメントなどもお待ちしております。
もし総合評価が100pt超えれば、
頑張って続編書きます(苦笑)
どうかよろしくお願いします!!