9日目/ハリボテの主従
そろそろこの作品も完結です。
そこで皆さまにお願いがあります!!
この作品の結果として、自分の反省に繋がるので
ブックマークだけではなく、コメントなどもお待ちしております。
もし総合評価が100pt超えれば、
頑張って続編書きます(苦笑)
どうかよろしくお願いします!!
●三枝屋敷(夜)
「――ううん、君達は家政婦じゃないよ」
三枝若葉は、膝を折る。
庭に座り込んだ伍号と目線を合わせる。
再度、彼女の叫びを否定する。
「オレは君達が家政婦だなんて思わない」
だって、と言葉を繋げる。
「オモチャって物でしょ? 物は考えないし、何も願わない。でも――」
――君達は自分の居場所を求めてる。
「自分を必要とされたい。自分はしっかりできる家政婦だって知って欲しい。そう思ってるんでしょ?」
「……そんなんじゃ、ねぇよ……」
「まぁ認めたくないよね。うん、オレも同じ立場だったら簡単に認めないかも……」
と、バツが悪そうに頬をかく。
「壱号さんも認めないと思うし」
「私、ですか?」
「うん。君は気づかないと思うけど、たまに微笑んでるよ? オレや弐号さんを見る目も温かくて……まるで弟や妹を心配するお姉さんみたいに」
言葉を失う壱号。
いや、照れているのか。
いつもの鋭い視線が、今、右方向に逃げている。
「ウチの家政婦さんは皆、不器用でさ」
ガスが通ってないからと、指から火を出して料理したり。
ゴキブリを素手で捕まえたり、虫を使って水道管の錆を落としたり。
思わず笑ってしまうほどの、破天荒さ。
しかし、それらは全て主人を――三枝若葉を想っての行動だ。
「引っ越してきてから大変続きだけど、オレはこの屋敷のご主人様だから、さ」
そして、三枝若葉が屋敷の主人であり。
「彼女達はオレの家政婦だよ。オモチャとか、バケモノとか……誰にも呼ばせない」
彼女達がその家政婦である限り。
「まぁカタチだけのご主人様のプライドってやつかな?」
この居場所は消えることはない。
笑ってもいいよ、とその後、付け加える辺り。
若葉の、立派な主人への道のりはまだまだのようだった。
××××× ××××× ×××××
壱号が照れた瞬間。
「……はは……」
自然と、破顔する伍号。
ほんの少し、頬を赤らめたような壱号。
柔和な表情など、今まで見た事もない。
残念な事に、伍号と壱号の付き合いは長い。
出会って数日の少年が、だ。
あの仏頂面の、壱号の表情をとかす事ができるというのか。
こんな、人間味ある表情をさせられるものなのか。
「……嫉妬しちまうな……」
本当に参った。
いらない家政婦など。
こだわっていた自分が、阿呆のように感じるのだった。
××××× ××××× ×××××
「ぷぷ、ご主人様。ッぷ、よくそんな恥ずかしいセリフ、いえますねぇ」
弐号、口に手をあてながらの含み笑い。
体内の虫もせせら笑っているのか。
破けた服越しに、身体中が異様に蠢いている。
「に、弐号! う、うるさいな! 笑わなくてもいいだろ!?」
「だ、だって『彼女達はオレの家政婦だよ。オモチャとか、バケモノとか……誰にも呼ばせない』ですよっ!?」
殺し文句にもほどがあります、と弐号が片腹をおさえて笑い続ける。
「いいだろ! 少しはご主人様っぽいところを見せたいんだよ!?」
照れている壱号。
無邪気にからかう弐号。
赤面する、主人になったばかりの青年。
伍号の事など眼中にないかのような賑わい。
彼女が屋敷にいた頃には、なかった温かい居場所だった。