9日目/壱号の泣き所
9日目/壱号の泣き所
●三枝屋敷(夜)
虎視眈々と、伍号は弾切れのタイミングを待っていた。
この弾幕の嵐に、それしか勝機がないと思ったからだ。
ジリ貧ともいうべき、圧倒的な制圧力。
手榴弾の爆風にも成す術もない、亡者達。
だが、耐久力ならばこちらも負けていない。
「さぁ寝てんじゃないよ!」
と、槍斧の柄を突く。
それを合図に、半身だけの亡者が動き始める。
下半身が暴れる骸骨。
はたまた、左半身が砕けた骸骨と色とりどりだ。
四方八方。
そこら中に飛び散った骨が、灰と化す。
その灰は群がる虫のように、半身不随の亡者に集まる。
灰は、欠損部位の代わりとして形成されていく。
そのおかげか、粉砕されたはずの下半身が再生される。
負傷がなかった事のように、立ち上がる亡者。
そして、伍号の前に群れては散っていく。
マシンガンの弾避けにはなるが、ずっとこうはしていられない。
「…………」
でも大丈夫だ、と心の声が木霊す。
魔力はまだ、残っている。
あと数分くらいならば、壱号の猛撃は耐えられる。
わかっていた展開だけに、焦りは少ない。
伍号、鋭い視線を忙しなく動かしながら観察する。
壱号の弾薬は無尽蔵ではない。
どこかで必ず手持ちの弾薬が切れる。
次の武器庫を開けて、それを補充される前に叩く。
案の定、亡者を盾にしているうちに弾幕が薄くなる。
片方のサブマシンガンが弾切れしたようだ。
屋敷側へ下がろうとする壱号。
それを見越して、指示を出す伍号。
「させないよ!」
壱号の後ろに回る亡者の群れ。
歪な再生をした骸骨達と、挟み撃ちをする。
「邪魔です」
と、オイルまみれの機関銃を放る。
瞬間、右足のつま先から白銀の隠しナイフが現れた。
切っ先が20センチほどのそれ。
上段蹴りで亡者に切り込む。
まるで紙細工のように両断される、あばら骨。
その流線が袈裟斬りに変化し、もう1体の首を斬る。
そして、左足でステップを踏み軽く跳躍。
腰のバネを使って、空中回し蹴りを食らわせる。
数体の亡者、横一文字にナイフを受ける。
ばたりと、骨を鳴らして倒れていく。
再生した骸骨が、壱号に迫るがもう遅い。
壱号、花壇のレンガを1本、また踏み抜く。
花壇の下から新しい武器庫がそびえ出た。
――また仕切り直しか。
伍号、鼻で苦笑する。
「しぶといねぇ」
「お互い様です」
せっかく落ち着かせた精神がざわつく。
また戦況が振り出しに戻ったせいだ。
「…………」
伍号、少し状況を整理し始める。
ここは相手先の独壇場。
武器はそこかしこに隠しているだろう。
魔力も、あちらの武器よりは多くないはず。
そうなると、手段が変わってくる。
××××× ××××× ×××××
伍号は、目的の”外道の書”さえ見つかればそれでいい。
だが、未だ”外道の書”は見つかっていない。
すでに侵入した亡者から、そのような反応を受けてないからだ。
まだ隠し部屋などにある可能性もある。
その場合、屋敷を占領しなくてはいけない。
そこで問題なのが、目の前の壱号だ。
まずは彼女を黙らせなければ、屋敷の捜索は面倒になる。
しかし、今の現状。
壱号との戦いは膠着状態――いや、むしろジリ貧に近い。
また、このまま戦闘を続けても。
時間をかけても目的のモノが見つかる根拠はない。
ならば、ここは早く戦闘を切り上げた方が得策だろう。
戦闘が早く終わり、壱号が降伏する方法。
正直、気乗りはしないが、仕方がない。
「……みーつけった……」
屋敷の隅に動く人影。
亡者ではない。
あれは人間だ。
この屋敷の中で、唯一の人間であり。
この戦闘の被害者にして、アキレス腱。
――さて、彼を人質にとるとしましょうか。
そろそろこの作品も完結です。
そこで皆さまにお願いがあります!!
この作品の結果として、自分の反省に繋がるので
ブックマークだけではなく、コメントなどもお待ちしております。
もし総合評価が100pt超えれば、
頑張って続編書きます(苦笑)
どうかよろしくお願いします!!