表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/52

9日目/中身のない矜持

●三枝屋敷(夜)


 ――本当、できない事ばかりだな。


 三枝若葉さえぐさわかばは、その皮肉に笑いをこらえる。

 

 伍号にも、その追従する亡者にも太刀打ち”できない”。

 

 壱号達に主らしい事をしようとしたけれど”できない”。

 

 一生懸命、バールを振り回しても何も”できない”。


 結果、何も”できない”。

 空虚な、ハリボテの主人だった。

 


××××× ××××× ××××× 



「――でも、さ」


 と、冷え切ったバールを強く握りしめる。

 

「できなくて当たり前だろ、そんなの」


 始めから”できる”人間はいない。

 そんな月並みの言葉もある。


 強がりなのは、百も承知。

 しかし、何よりもここで止めたら本当の意味で何も”できない”。


 本を読む時も。

 知識を得る時も。

 経験を積む時も。


 始めはゼロから、だ。


 頁をめくる手を止めたら、何も進めない。

 調べる欲を失えば、幼児と何ら変わりない。


 だがらこそ、傷つく事やリスクがある上で、前に進む。

 先の展開を怖がっていては、先に進めないからだ。


「どんどん面白い展開が待ってるっていうのに……そこで頁をめくらなかったら勿体ないでしょ……」


 いうなれば、読書と一緒。

 次を知るためにはその1頁をめくる。


 仮想の人物なれど、そこに苦楽が描かれている。

 

 紙の中で、その苦楽をどう乗り切るのか。

 自分が読み解いていくうちに、どういった知識を得るのか。



「そう、だ……ごちゃごちゃ考えるのは……」


 ――止めにしよう。


 若葉、顎を高く上げて深呼吸。

 御託や迷いが、白く染まって吐き出される。


「…………」


 もう”できない”に関して、どうでもいい。

 頁をめくるように、目前の”できる事”をこなすだけ。


 空っぽで、薄っぺらな、肩書だけのご主人様でいい。

 逆立ちしても、一朝一夕で三枝厳十郎に追いつくわけもない。


 恰好悪くてもいい。

 屋敷の家政婦メイドだけ働かせて、何が主人か。


「……よし……」


 ――まずは、いらないモノを捨てよう。

 

 サバイバルベストを外す。

 改造エアガンもいらない。

 バクチクも、ゴーグルもその他の重たいモノも全て。


 いるのは、バールで十分だ。

 あとは体当たりでもして時間は稼げる。


 ――これで、あとは頁を……1歩を踏み出すだけだ。

 

 ――さぁ裸の王様らしい醜態を頑張って晒そうじゃないか。

読了ありがとうございます。


簡潔に。

コミカルに。


引き続き、それらをモットーにやっていこうと思います。


「アホだなぁー」とか、

「なんかこうすれば面白くなるのになぁー」とか、


そんな共感があれば、ブックマークや評価お願いします。

正直、励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ