9日目/感傷深い警告
長編って大変ですね。
視聴者、読者的には「なかだるみ」って嫌いなんですが……
書いててビックリ。
自分の作品も「なかだるみ」ばっかじゃん!
――と、読み返すと反省ばかりです(笑)
平にご容赦を。
●三枝屋敷(夜)
その夜は、異様に五月蠅かった。
生活音をかき消す、こすれ合う音。
静寂の中、骨と骨が軋む音。
数は無数、硬い足音。
それらは全て、亡者の奏でる音。
意思のない、数十体にも連なる死者達の慟哭。
戦いの狼煙にしては、耳障り。
亡者の大群は、ゆっくりとした足取りで屋敷を囲う。
通常の一軒家。
それが4戸分以上になる三枝屋敷の敷地。
そそり立つ壁をさらに覆うように、亡者が屋敷に迫る。
灰色の骸骨は、我気にせずと壁を身体にぶつけていく。
正門や裏門もいつまで耐えられるのか。
しかし、亡者の波がさらにうねりを増す。
まるで屋敷という船を転覆させようとしているようだった。
「はは。ここも変わってねぇな、昔のまんまだ」
死者の荒波に浮かぶ、1人の女性。
三日月を背中に携えて、宙に舞うその体躯。
伍号、音もたてず正門の手前で降り立つ。
今日は私服ではない。
以前、彼女が着ていたとされる戦闘服だった。
薄紫に染まった和服を基調としたそれ。
下半身の大半に纏う、白い袴。
垂れた両手の袖が、夜風に揺れる。
肩口にかけて、白いフリルがなびいている。
その背中に生えるは、鋼の戦斧。
鈍く反射した、人を殺すための道具。
「夜分遅くにぞろぞろと。無作法にもほどがありますよ、伍号」
と、屋敷の玄関から姿を現す。
逆に壱号の容姿は変わり映えがない。
普段と同じ服装で、表情も変えずに伍号を迎える。
「うるせぇよ。一応こっちも気を回して”人払いの術札”使ってやってるんだ」
かたいこというな、と伍号は鼻立ちのいい小鼻で笑う。
「それで、今夜は何の御用ですか?」
「アンタらを追い出して”外道の書”を見つける」
「はい」
「こんな薄っぺらい門なんて吹き飛ばせるんだ。尻尾巻いて逃げた方がいいぜ」
「それは警告ですか?」
「……一応、だよ。腐っても昔馴染みの、古巣への礼儀ってもんさ……」
「性格が丸くなったものですね」
「うるせぇ! オマエの口うるささはコリゴリなんだよ!」
「それは失礼」
壱号、手を前に組んだ待機姿勢は崩さない。
玄関口を背に、伍号と対する。
「んで、大人しく屋敷を明け渡すのか? 渡さないのか? はっきりしろよ」
小さく、ほんの小さなそれ。
なぁ姉さん、という呟きは夜風に攫われていった。
読了ありがとうございます。
簡潔に。
コミカルに。
引き続き、それらをモットーにやっていこうと思います。
「アホだなぁー」とか、
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