2日目/不穏な噂話
●親戚の家/居間
翌日、屋敷に暮らし始めて2日目。
その早朝、三枝若葉の親戚宅の電話が鳴る。
スーツを着た若葉の叔父。
テレビに視線を向けながら、受話器を取る。
「はい、もしもし。おお、若葉か。おはよう」
『おはよう、叔父さん。朝早くからごめん』
「どうしたんだ、こんな朝っぱらから? 引っ越し早々、何かあったのか?」
察しが良い叔父。
若葉は、夜に起きた怪奇現象について叔父に相談する。
「……そうか……やっぱり出たんだな……」
『出た? 出たって何が?』
「あ、いやな……お前に貸した屋敷な……夜な夜な、幽霊やラップ音みたいな怪奇現象が起きるって、隣人から噂されてるんだよ」
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話をまとめると、こうだ。
若葉の祖父である三枝厳十郎。
かつて戦時中の武器開発を営んでいた、科学者だったそうだ。
そんな彼は戦後、築いた富を全て三枝屋敷に注ぎ込んだそうだ。
当時、堅牢な造りをしていた屋敷は彼の研究所としても使われた。
だが、次第に彼の屋敷から不穏な噂が流れ始める。
三枝屋敷に訪れた家政婦達が、1人、また1人と行方不明になっているらしいと。
女性の断末魔も聞いた住民もいたそうだ。
実際にはどうかはわからない。
しかし、その噂や数多くの怪しい事が起きたため、三枝厳十郎は異質者のレッテルを貼られ生涯を終えたとも聞く。
それから半世紀以上経った今。
誰も住む事はなく、三枝屋敷は寂れてしまった。
時には、かつて悲惨な末路を遂げた家政婦達の怨念が彷徨い歩くそうだ。
ポルターガイスト。
ラップ音。
屋敷の窓に映る、火の玉。
それが幽霊屋敷とも呼ばれるように所以である。
××××× ××××× ×××××
『つまりその幽霊屋敷をオレに譲った、と?』
「そうだ。お前、大学通える範囲で1人暮らししたいっていってたろ。でも金がないって事もぼやいてたからちょうどいいかなって」
確かに、いった。
確かに、ぼやいた。
だが、それとこれとでは話が別だ。
『……ちょっと待て、おい……』
「ん?」
『いくらなんでもそんな危ない場所を、悪びれもなく紹介するんじゃねぇーよ!!』
「あはは、すまん!」
と、受話器を耳にあてながら頭を下げる。
その軽薄な声色に、憤りを禁じ得ない若葉だった。
読了ありがとうございました。
断りとして、一言。
この作品は、『家政婦=メイド』として表現しています。
ご容赦ください(笑)
もし字面の表現の仕方や、
無理やりなギャグテイストに思う所がありましたら、
ブックマークや評価よろしくお願いします。
生暖かく投稿していきたいと思います。