4日目/灰色の撤退
つい、出来心だったんです。
ええ。
アクションを書きたくて、
コメディ路線も書きたくて、
気づいたらコメディ多めになっていたなんて……(笑)
頑張って後半もバトルつゆだくでいきますね!!
●墓場(夜)
2対1。
三枝の陣営は壱号という援軍を得る。
視覚には捉われない、安堵感が漂う。
反面、緊張の糸がさらに張り詰めるは伍号。
――分が悪い。
そう判断した時には、悪態をついていた。
「ちっ! 真面目メガネは引っ込んでな!」
壱号、いつもの無表情のままメガネの縁を持ち上げる。
「そうはいかないわ。私はご主人様をお迎えに上がったのですから」
対面する、壱号と伍号。
2人のにらみ合い、その凄みに気おされて後退する弐号。
肩口をやられたのか。
だらんと、下がったハサミと化した右腕。
右肩を押えながら三枝若葉に歩み寄る。
「大丈夫ですか……? ご主人様……?」
「ああ、うん……なんとか、ね……」
見るからに胸をなでおろす弐号。
だが、彼女の服は土埃の色。
そして、身体の至る所には切り刻まれた爪痕。
壱号、その姿を一瞥する。
「――弐号」
「……はい、お姉様」
「よくご主人様を守りましたね」
「……は、はい! ありがとうございます!」
褒め言葉を受けて嬉しいのだろう。
疲弊の色は吹き飛び、両眉が最大に持ち上がる。
「ご主人様のお帰りが遅いから心配してみれば、こういう状況になっているとは予想外でした」
「あ? なんだよ?」
と、睨み返すが、その鉄面皮からは感情がうかがい知れない。
こちらも前と同じだ、何も変わらない。
その黒い瞳は、何を感じているのか。
そのエプロンドレスの奥に、何を抱いているのか。
――全く、わからない。
だからこそ、つっけんどんな対応になってしまうのだろう。
「相も変わらずの仏頂面だな、壱号!」
「その失礼な物言いを聞くのも数年ぶりね、伍号」
うるせ、といいながら、伍号の目線は忙しない。
壱号はまだ、臨戦の構えに入っていない。
背後の弐号は、満身創痍の状態でそこにいる。
当初の狙いだった三枝若葉だが、”外道の書”の在処も知らないという。
この際、利用価値はないに等しい。
――その時、依頼主の言葉が反芻する。
『”外道の書”は必ずある。それは三枝家に代々引き継がれるモノ。もし今度の新しい当主が持ってないと口にすれば、屋敷にある可能性が高い』
――その言葉を信じれば、”外道の書”はおそらく三枝屋敷にある。
本来なら若葉を捕獲して、手っ取り早く在処を聞き出そうとしていた。
しかしその途中で、壱号が邪魔に入ってきた。
この場合、若葉の身柄欲しさに、深追いする事は悪手に近い。
なにせ大局的にも、状況は伍号に不利だ。
度重なる亡者の再生で、魔力は底を尽きかけている。
これ以上の戦闘は、あまり推奨できないのだ。
このまま屋敷を襲っても、持久戦はできそうにない。
「どうしますか? これ以上、続けますか?」
壱号も、同じ思考の果てに問う。
それは自分達を相手すると痛い目を見る、という静かな威嚇行為。
そんな威嚇や挑発に乗るほど、伍号も単細胞ではない。
ここは引き時だ。
「けッ、今日はオマエに免じて手を引いてやるよ! おい、弐号! 命拾いしたな!」
と、壱号達の返事を待たず、姿を消す。
暗闇に紛れた伍号と同時に、亡者は灰となり地面に散っていく。
辺りを制する、静寂。
残された3人の中、弐号が恐る恐る、口を開く。
「……追いかけなくてよかったんですか?」
「ええ。私はご主人様をお迎えに上がっただけですから」
ひんやりと。
壱号の澄ました声が夜風に流れた。
読了ありがとうございます。
簡潔に。
コミカルに。
引き続き、それらをモットーにやっていこうと思います。
「アホだなぁー」とか、
「なんかこうすれば面白くなるのになぁー」とか、
そんな共感があれば、ブックマークや評価お願いします。
正直、励みになります。