4日目/壊れたオモチャ
●墓場(夜)
墓場の有様は惨劇だった。
毒虫の体液で、墓石や地面は溶解。
卒塔婆は、無残にも折れていく。
至る所に亡者達の骨や散った灰が散乱している。
線香の落ち着く香りはすでにない。
辺りを漂うのは腐臭なのか。
それとも異臭なのか。
脳の理解が追い付かない。
そうした荒れた墓場。
2つの影が藍色の夜空を背景に、飛び交う。
「なんだなんだ、バテるの早くないかい? 止めてほしけりゃ三枝若葉を渡しな。それで手を引いてやるよ」
「……バテて、ません……ええ、一切、これっぽちも……」
毒虫を使役するには、大量のカロリーを消費する。
毒虫を2体も戦いに出した事で、弐号の顔に疲弊が伺える。
その弱点を知っていてか。
伍号の従える亡者は、ゆっくりと彼女達を包囲していく。
真綿で首を絞められていく戦況に、弐号は冷や汗をかく。
「というか……なんで、ご主人様を……襲うんですか……?」
ほんの少し、伍号の動きが止まる。
同時に身体からたぎっていた闘争心が薄れた。
それに呼応して、亡者の猛襲が静まる。
振りかぶっていた腕を、ゆっくりと下す亡者達。
首をもたげて、次の指令を待つ。
「知りたいかい?」
睨む弐号の目。
それを頷きと受け取る伍号。
「アタシは今、とある依頼主のトコで厄介になっててね。そこから頼まれたんだよ」
「……とある依頼主……?」
「ああ。三枝屋敷に隠された”外道の書”を見つけてこいってな」
弐号の背後。
地面に尻もちをついていた三枝若葉。
その言葉に反応を示す。
「……”外道の書”って一体なんですか?」
「ああ、そういや三枝屋敷の新しい主様は知らないんだっけ?」
と、嘲る口元に手をやる。
高説とばかりに”外道の書”について語り始める伍号。
”外道”とは、非人道的な知識の集大成。
それを書き記した人外の知識、その粋を集めた本がある。
それが”外道の書”と呼ばれるモノだ。
若葉の祖父、三枝厳十郎は生前までそれを所持していたらしい。
その書の恩恵として、家政婦達の異形化。
自ら究める、外道学の進歩や発展に繋げたらしい。
――いわく、”外道の書”を手にした者は英知を得る。
「……英知、を得る……」
「そうさ。簡単にアタシらみたいな化け物メイドができるんだ。その英知ってもんが、どれほどのもんなのか……予想もつかないね」
だけどね、と伍号が続ける。
「アタシの依頼主がそれを求めているんだよ」
一瞬、血色が悪い表情に、若干の憂いが映りこむ。
「アタシはあの壱号や弐号みたいに”いらない家政婦”はごめんだね。アタシは必要とされたい。こんな化け物みたいなアタシでも……誰かのために仕事するからこその”家政婦”だろ?」
読了ありがとうございます。
簡潔に。
コミカルに。
引き続き、それらをモットーにやっていこうと思います。
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