4日目/毒虫と死体
●墓場(夜)
弐号は、異形の体躯で墓場を舞う。
背中にはムカデを生やし。
右の腕はクワガタを模したようなハサミと変化している。
歪な身体を、その毒虫を操りながら戦う。
普段は背骨の役割をこなしている”むかむか丸”。
無口で、頑張り屋さん。
体幹としても、縁の下の力持ち存在である毒虫の1匹だ。
こうした接近戦、乱戦では”ハサミの助”も大活躍だろう。
出しゃばりで、自己主張が強い自信屋。
右の前腕に擬態しているが、ひとたびそのハサミ部分を開けば亡者もひとたまりもない。
「挟め! ”ハサミの助”ッ!!」
先ほどまで右腕だった場所。
指先から肘まで、左右に分かれたハサミがある。
鋭利な歯が生えているそれを振るい、亡者の背骨を切り落とす。
クワガタを模した毒虫。
それが”ハサミの助”だ。
「…………むぅ……」
あまり良い状況ではない。
さて、どうしたものか。
弐号は、周囲の骸骨をなぎ倒しながら思う。
状況はどうみても、多対一。
いくら体内の毒虫達と頑張ったところで、限度がある。
なぜなら、骸骨姿の亡者相手にはキリがないからだ。
いい換えれば、亡者には毒は効かないのだ。
「生身が相手ならイチコロなのにぃー」
”むかむか丸”が吐いた強酸性の体液。
それを受けた亡者達が、無我夢中に弐号へ襲い掛かる。
胴体が溶け、上半身を引きずりながら進む亡者。
右腕が溶解し、左腕を振りかぶって襲ってくる亡者。
当然、亡者に意思はない。
ただただ、弐号を討ち取らんと爪をたてる。
「はは! アタシと相性が悪いってわかっててよく粘るね!」
鈍い衝突音。
伍号、手元の斧槍を石床に押し当てる。
すると、みるみるうちに倒れて動けなくなっていた亡者が霧散する。
煌めく灰に形を変え、半壊した亡者にたどり着く。
片腕を失った亡者は、灰を得て片腕を取り戻す。
そうして他の亡者達も、欠損部分を補っていく。
「アンタの能力じゃアタシには通じないんだよ!!」
「……ああもうっ!! だから伍号お姉様とは戦いたくないんですよ!」
と、褐色の足で地団駄を踏むのだった。
読了ありがとうございます。
簡潔に。
コミカルに。
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