4日目/妖艶な微笑
この回で家政婦が3人、登場した事になります。
初期プロットでは、まだ3人ですが……色々と深堀できたら嬉しいです。
ちなみに。
メイドの元ネタ的なイメージは、以下の通りです。
・壱号:丸山くがね先生のオーバーロード、首無し某メイドさん
・弐号:18禁ソフトALICESOFTのランスシリーズ、青い着物の忍者さん
もし、ご存知の方がいましたらそうしたキャライメージで読んでくれると助かります(汗)
●図書館(夜)
三枝若葉は、目頭の重みを感じて天井を仰ぐ。
鼻筋に指をあて、軽く揉む。
向こうの暗闇を映した窓ガラスに、伸びをした若葉が映りこむ。
「……そろそろ時間か……」
左手の腕時計を見下ろすと、時間はすでに19時半を過ぎていた。
図書館の閉館は確か20時頃だったか。
空腹を訴える腹も、沈めなくてはいけない。
「…………片づけるか……」
目の前に積まれた数冊の分厚い本。
どれも肌触りの良い、ハードカバー。
棚へ返す時間も惜しくて、ついついためてしまっていた。
若葉、読んだそれを元々あった本棚の場所に戻す。
さっきまで読んでた本は、まだ途中なため借りていくとしよう。
ついでに探していた時、気になっていた本もいくつか回収する。
静かな図書館には、若葉と司書しかいないと――そう思っていた。
「――なぁ”外道の書”ってどこにあるか知ってるか?」
と、いつの間にか横にいた女性に声がする。
一瞬、反応が遅れる若葉。
身体と心が跳ね上がるが、それは緊張や驚愕ではない。
その艶めかしさに、だ。
彼女を一言で表現するならば、妖艶。
艶やかな体躯に、微笑む整った顔立ち。
小綺麗に揃えた前髪から、ほのかに鼻をくすぐる甘い香り。
「え?」
若葉、眼前に広がる胸元へ、つい視線がいってしまう。
黒いタートルネックのニットを着た彼女。
その胸元は大きく膨らんでいるのは明白だ。
加えて、そのくびれた腰回り。
急勾配の臀部へと、女性モデルのような身体つき。
ついつい、視線が足元まで落ちていく。
「”外道の書”だよ。知ってるんだろ?」
勝気な言葉に、我に返る若葉。
初対面の女性をジロジロと観察するのは失礼だろう。
と、平静を装う。
「……ゲドウの、ショ……ですか?」
ゲドウ、といえばやはり”外道”の事だろうか。
正直、その場所はこちらが問いたいくらいだ。
はて、と首を傾げる若葉。
反面、若葉は隣の女性に尊敬する。
自分以外にも魔術などの”外道”を知りたい酔狂な人がいたのだと感心したからだ。
「……その感じだと、知らないのかい?」
「……え、まぁ……こっちが教えて欲しいくらいですかね?」
「……ふーん」
と、長いまつ毛が下を向く。
若葉が小脇に抱えた本の背表紙を見つめている。
「西洋における宗教と時代背景。宗教人類学。社会学的宗教社会学。西洋史における魔術の歴史、などなど……」
へぇ、と口元が三日月のように欠ける。
「今度の三枝の主人は勉強熱心だね。でも悪いけど、こんな宗教じみた薄っぺらい内容じゃ”外道”の知識に似ても似つかないよ」
「薄っぺらい、ですかコレ?」
つい本の厚さの事を指しているかと思い、目を疑う若葉。
それを察した女性は、手を左右に振る。
「ああ、違う違う。厚さじゃなくて、内容が薄っぺらいの。”外道”は、非人道的な知識の集大成。こんな人道的崇拝者が書いた内容なんて読む気も失せるね」
妖艶な女性、若葉を見つめながら顔を近づける。
「”外道”ってのはね、人間を人間と思わない……例えば人間の内臓を鍋に入れたり、四肢をパーツとして使ったり、下衆な知識なんだよ」
若葉、蛇に睨まれた蛙だった。
またもや胸の鼓動が跳ね上がる。
鼻腔をくすぐる甘い香りに、赤面してしまう。
「よく魔女が人間の髪の毛とか入れるだろ? それと一緒だよ……”外道”に落ちた者は人間をまるで材料のように扱うんだ……」
「材料……?」
「――ああ、自ら求める結果のために、な」
求める結果。
祖父、三枝厳十郎にとっての求める結果とは”家政婦達”の事だろうか。
それを達成するために、生身の家政婦達を人外に変えてしまったのだろうか。
そうした疑問に答えは出ない。
なぜなら、三枝厳十郎はすでに故人なのだから。
「だからさ、外道に首を突っ込まない方が身のためさ。アンタも――三枝若葉も平凡な1人暮らしをしてみたいだろ?」
読了ありがとうございます。
簡潔に。
コミカルに。
引き続き、それらをモットーにやっていこうと思います。
「アホだなぁー」とか、
「ここの表現、独特だなぁー」とか、
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