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4日目/新しい生活②

●三枝屋敷/厨房


 心身ともに疲労した買い出しを終えて帰宅する。


 三枝若葉さえぐさわかばは、壱号と共に食堂に向かう。

 その奥、厨房辺りに買ってきたばかりの食材を置いた。

 

「ふぅこれでいいかな」

「はい、ありがとうございました。ご主人様、コーヒーを淹れますのでお待ちください」


「あ、水は足りてる? 買ってこなかったけど……」


「ご安心ください。今朝方、水道やトイレの水回りも回復しました。今晩はお風呂にも入れます」

「え、マジ? やったー!」


 と、年甲斐もなく諸手を上げて喜ぶ。

 これでトイレの度に、ペットボトルの水を流し込まないで済む。


「ふふ」


 一瞬、無表情の壱号の頬が少し緩む。


 だが、気のせいか。

 振り向くと、いつもの鉄面皮がそこにあった。


「何か?」

「ううん、なんでもない」



 世間話をしている最中。

 沸き立ったお湯をコーヒーメイカーに注ぐ。

 以前も嗅いだ、香ばしさが鼻をくすぐる。


「いただきます」

 

 と、琥珀色のそれを1口分、嚥下する。


「うん。やっぱりオレが淹れたコーヒーより、壱号さんが淹れてくれた方が何倍もおいしいな」

「お褒めの言葉、ありがとうございます」



 

●三枝屋敷/寝室


 その後、2杯目のコーヒーを片手に寝室へこもる。

 若葉は昨日買ったばかりの、くたびれた本を読み始めた。


 コーヒーとは違った、古本特有の湿った臭い。

 若葉自身、この臭いは嫌いではない。

 

 現在、目を落としているのは、西洋史における宗教についてだ。

 魔術だけを的にしても、射れない。

 今回はその時代背景、歴史や宗教で記されている魔術について知ろうとしているのだ。


 中々、外道についての記述が出てこない。

 もどかしさを感じる中、コーヒーカップが空になる。

 

「ご主人様、どうぞ! おかわりをお持ちしました!」

「うお!? に、弐号さんか……突然、耳元で大声を出さないでよ……」


 本音を漏らしてしまったせいか。

 しゅんと伏し目がちになる、弐号。


「ご、ごめんなさい。驚かすつもりはなかったんですが……」


 彼女の目は、小動物のそれ。

 小さな涙を溜めながら、手遊びをしている。


「こっちこそごめん。おかわり持ってきてくれたのに」

「いいんです。自分が勝手に淹れてきただけなので……あ」


 うなだれる弐号をよそに、若葉は新しいコーヒーを咽喉に流し込む。


「うん、美味しい! オレや壱号さんとは、また違った味わいがあるね!」

「ッ!? よかったです!」


 と、笑顔という向日葵が咲く。


 やはり、そのまばゆい笑顔を見れば見るほど彼女が人外だとは信じられない。

 天真爛漫な、遊び盛りの子供のようだ。


「昨日からずっと虫達を使って、水道の錆を食べさせたかいがありました!!」


「へ?」


「あれ、お姉様から聞いてませんか? ずっと使ってなかったせいで水道が錆びてたんです! それで私の虫を水道管に送って、頑固な錆びを食い切ってもらったんですよ!!」


 若葉、静かにコーヒーカップをソーサーに戻した。

読了ありがとうございました。


断りとして、一言。

この作品は、『家政婦=メイド』として表現しています。

ご容赦ください(笑)


もし字面の表現の仕方や、

無理やりなギャグテイストに思う所がありましたら、

ブックマークや評価よろしくお願いします。


生暖かく投稿していきたいと思います。

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