表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/52

4日目/新しい生活①

●三枝屋敷/寝室(朝)


 カーテン越しに浴びる朝日。

 三枝若葉さえぐさわかばは、自然と目が覚める。

 むくりと、すぐに身体を起こし、背筋を大きく伸ばす。

 

 この屋敷に暮らし始めて4日目。

 少しずつではあるが、屋敷の空気もかび臭いシーツにも慣れてきた。


 かつて寒気が止まらなかった洋装も、昼間では何も感じない。

 怪奇現象だと思っていたモノの存在が、はっきりしたのだから。


 深夜には内心、怖がりながらトイレに行く事もあるがご愛敬だ。


 若葉、そそくさと着替えているとノックの音が3回。

 おそらく壱号だろう。

 どうぞ、と促す若葉。


「失礼します。ご主人様、おはようございます」

「おはよう、壱号さん」


 初めは家政婦メイドという立場に驚いた若葉。

 しかし、慣れとは怖いモノで今では自然に彼女と振る舞える。


 この屋敷の管理をする使用人、壱号。

 自らを魔工学を駆使して創られたサイボーグだと自称する女性だ。


 ここ数日、彼女に世話をされてよくわかった。

 申告通り、彼女は人外のそれである、と。


 どこの誰が、指から火を噴かしたり。

 一足飛びで屋根裏に隠れたりできるのか。

 どれも人間にできない芸当ばかりだった。


 経験のない、家政婦メイドとの共同生活。

 慣れない事ばかりではあるが、慣れるしかないのだろうか。


 ――まさしく前途多難だなぁ。


 と、思っている最中。

 

 壱号は甲斐甲斐しく、朝のコーヒーを淹れてくれる。

 これは若葉が日課にと、お願いした事だった。


 昨日の朝、起き抜けに着替えを手伝うといってきた壱号。

 当然、断る若葉だったが、壱号も断固として引き下がらない。


 そこで譲歩案として、この頼み事だ。


 まだ日も経っていない日課だが、その淹れる姿は様になっている。


「そうだ。午前中のうちに買い出ししてくるんだけど、何かいる?」

「買い出しなど恐れ多い。ご命令下されば私が向かいます」


「あー、なら一緒に行く?」


 それが気まぐれな失言だったと、後悔する事となる。




●商店街/生鮮スーパー


「――ねぇ壱号さん」

「はい、ご主人様」


「なんで、買い物の時もメイド服なんですか?」

「この服装は私達の一張羅であり、普段着です。何か問題でも?」


「あ、いや……その……」


 問題がありすぎて困っているとはいえない若葉。

 正直、周囲の目が痛すぎて、困っている。


「ねぇなにあのカップル? 女の人にメイド服着させてるわよ?」

「うぉーメイドさんじゃん。しかも中々にクラシックなヤツだ」

「あれが彼氏の趣味って事……てか、あの男の子、幽霊屋敷に引っ越してきた子じゃない?」


 彼ら住民からしたら、若葉は余所者。

 しかも、地域で有名な幽霊屋敷の主ときたものだ。


 その話題の男が、メイド服を着せた女性と歩いている。

 恋人としてならその美貌は申し分ないが、若葉と壱号は違う。

 

 それはもう見た目通り。

 私服姿の学生と、シックにまとめたメイド服の女性。

 

 だが、実際には主人と侍女の関係となっている。 

 こんなアベコベな関係を、誰が想像できようか。


「……うわぁ……恥ずかしいー……」


 と、小さな弱音を吐く。

 誘った自分がいうのもなんだが、早く買って帰ろう。


 そこでふと、疑問が浮かぶ。


「そういえば壱号さん達は今までどうやって食べてきたの? お金は?」


 野菜の鮮度を確かめている、壱号。

 玉ねぎを回す手つきはどうにも、主婦だった。


「弐号の体内で飼っている虫をペースト状にすりつぶした、おかゆのようなモノを食べていました。先代様の資産には全く手をつけてはいけないと思い……」


「は?」


 と、素っ頓狂な声が出た。


「何か変な事を口にしましたか?」


「変な事も何も……今、弐号さんの、その、体内で飼ってる虫を食べてたって……」

「はい、弐号は毒虫婦です。毒を持って毒を制す。彼女はくノ一でもあり、蟲毒呪術の継承者でもありますから」


 と、説明してくれる壱号。


「彼女の飼育する食用虫には、エネルギーや栄養素が豊富に含まれているんです。そもそも私は半分機械のため食事は――」


 ああ、と若葉は心の中で呟く。


 ――どうしてだろう。

 どうして壱号や弐号も、昆虫のスプラッタに免疫がある女性ばかり集まるのだろうか。


 摩訶不思議に思い耽る、若葉であった。

読了ありがとうございました。


断りとして、一言。

この作品は、『家政婦=メイド』として表現しています。

ご容赦ください(笑)


もし字面の表現の仕方や、

無理やりなギャグテイストに思う所がありましたら、

ブックマークや評価よろしくお願いします。


生暖かく投稿していきたいと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ