プロローグ/譲り受けた幽霊屋敷
今作のテーマは『アクション × コメディ』です。
不器用な人外メイドたちと、
どこにでもいる優しい青年とのギャグに苦笑してもらえたら嬉しいです。
「幽霊が出る? それって気のせいじゃない?」
皆、この話をすると口をそろえていう。
だが、信じて欲しい。
決して話題や怪談話をしたいわけではない。
本当に、この三枝屋敷には”何か”いるんだ。
絶対に、いる。
”誰か”なのか。
”何か”なのか、よくわからない。
でも、絶対に得体のしれない”何か”がいるに違いない。
きっと、人でもない。
もちろん、動物でもない。
それはおそらく、人外の異形。
人間の常識を覆す、異形の”何か”だ。
●三枝屋敷
例えば、そう――あれは屋敷に引っ越してきた初日。
待ちに待った、念願の1人暮らし。
午前中のうちに、叔父夫婦の手伝いもあり荷物を運び終えた。
順調に進むと思われた矢先。
叔父の手違いで水道や電気がまだ回復していない事に気づいた。
数日中に回復するからそれまでの辛抱だと、叔父はいった。
そんな叔父の車は、私物の段ボール数個を降ろして帰っていく。
正午には彼、三枝若葉だけが屋敷に残された。
――まぁ仕方ないか。
と、若葉は段ボールを尻目にコンビニに足を向けた。
できる限り頭を働かせて、商品棚を漁っていく。
数日分の食料と飲み物。
蝋燭や電池なども買い揃える。
もちろん水が流れないため、大便をそこで済ませる。
小便は、便器にペットボトルの水を流し込めばいいだろう。
気づけば、外は夕暮れ。
俗にいう、逢魔が時というのだろうか。
夕日が、大地を染めながら沈んでいく。
染まっていく建物の中。
大きな影を作り出す、1軒の屋敷。
「…………本当に不気味だな……」
地元では幽霊屋敷と名高い、レンガ造りの屋敷。
赤褐色の壁や酸化した黒い門には蔦が絡む。
軋む正門をくぐると、石造の廊下が玄関へと続く。
少々、荒れ果ててはいるが庭は相当に広い。
足のくるぶしくらいまで生えた雑草。
土だけが盛られた、何もない花壇。
叔父夫婦の手入れも、流石に全部は見切れない様子だった。
「まぁ住めば都っていうしな」
他人からは幽霊屋敷でも。
今日からは、自分の家でもある。
若葉、玄関の錆びた取っ手に手をかける。
自分の身長を優に超える扉を押して入る。
「やっぱり……すごいな……」
玄関から入ってすぐの広間に唾を飲む。
内装様式も洋風が貫かれている。
絨毯やレトロな家具、柱時計、飾られた西洋人形。
至るところに西洋の細工が施された物が立ち並ぶ。
祖父いわく。
どれも年季が入った、祖父のコレクションだったらしい。
しかし、不便な所もあるらしい。
軋む音や吹き抜けな構造。
暖房施設も、暖炉ぐらいしかないという。
「とりあえずご飯食べて寝よう。暗いと何もできないし。片付けは明日の朝からだ、うん」
まさに住んで都にするしかないのだと。
この時の若葉は深く考えてもいなかった。
読了ありがとうございました。
断りとして、一言。
この作品は、『家政婦=メイド』として表現しています。
ご容赦ください(笑)
もし字面の表現の仕方や、
無理やりなギャグテイストに思う所がありましたら、
ブックマークや評価よろしくお願いします。
生暖かく投稿していきたいと思います。