4話
始業式、入学式共に終わり、クラス内での自己紹介、それぞれの授業担当の自己紹介が終わって1週間が経った。
授業も始まり、高校生活が始まったが、一つ問題があった。それは―――
「主担任、いつ来るの?」
「もう1週間経ってるよね。さすがに遅くない?」
朝のHRが終わった後、クラス内が騒がしくなる。
副担任の外崎愛純先生いわく、
「担任の先生はポカやらかして監禁状態になってるから、しばらくは顔を出せない」
とのことだった。
「主担任って家庭科の先生だろ?別の先生が代役でやってるけど、やっぱ担任の先生とやりたいよなぁ」
「まあ、早く担任の先生に会いたいってのはあるけど、一つ気になることがあるんだ」
「なんだ?」
「皆さりげなくスルーしたけど、監禁状態になってるってどういう事?」
「...雪」
「はい」
「そこは触れない約束ってクラス内で決まってたぞ」
「いつの間に!?」
「それを伝えられた瞬間から皆目配せあって頷いてたが」
「何その軍隊のような連携力!?」
驚きそう言うと、クラスの男子が笑みを浮かべて言う。
「暁、これが俺達の連携力だぜ」
「...改めて今年は楽しめそうだなと思ったよ」
クラスの皆が頷きあっているのを見た雪風は苦笑しながらそう言った。
◇
クラスの連携力の高さを知ってから3日後の6限目、チャイムが鳴ったため席について待っていると外崎先生が入ってきた。
授業をする様子もなく手ぶらなため、首を傾げていると、
「今日は授業をしないわ。紹介したい人がいるの」
少し待っててと言って教室を出ていき数分すると、なにやら声が聞こえた。
「嫌です!私は命の恩人に礼を言わなくちゃいけないんです!」
少女のような声が聞こえた。
「...おい、この声って」
蓬が振り返って小さな声で話しかけてくる。
「うん、もしかして」
それ以上言わず、教室の扉を見ていると、声が大きくなってきた。
「まずはクラスの皆に挨拶してからです!命の恩人って言ったって如月先生がポカやらかしたからでしょう!」
「それはそうですけど!あの時ちゃんとお礼に行くって言っちゃったんですよ!」
「だからまずは生徒に挨拶してからです!ほら、もう教室についたんですから挨拶しますよ!」
「うぅ...一生恨みますよぉ」
そう言って扉が開かれ、2人が入ってくる。
1人は先ほど出ていった外崎先生、そしてもう1人は見たことのある顔。
「...如月早苗と言います。今年から...」
そう言いながら教室内を見渡し、雪風の方を見て固まる。
「...如月先生?どうしました?」
外崎先生がそう言うが、目を見開いたまま固まっている。
「...あの」
その視線に耐えられなくなり暁が声をあげると、ビクリと震え、小さく呟く。
「...あの人だ」
「えーっと、お久しぶりです...」
遠慮がちに声をかけると、如月先生は雪風の方へ一直線に向かい
「その節は、本当にありがとうございました!」
廊下に響きわたるほどの声量で、頭を下げてそう言った。