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15話

「おっ、上がったのか。…どうしたんだ?顔すげぇ赤いぞ?」

風呂から上がった雪風を見て蓬が怪訝そうな顔で言う。

雪風はそれに苦笑いを浮かべる。

「蓬…」

「ん?」

「やっぱり霞さんは苦手だ」

「?そうなのか、何かあったのか?」

「ちょっとね…」

「ちょっと雪とお風呂に入ってたんですよ」

背後から霞がにこにこと笑顔で言うと、蓬だけでなくその場にいた如月先生や千夜もバッと雪風の方を向く。

「一緒にお風呂!?」

「何したんですか!?一体お風呂の中でナニをしたんですか!!」

「そうだぞ教えろ雪!ナニをしたんだ!!」

「…言葉は違わないはずなのに意味合いが違うように聞こえるのは気のせいなのかなぁ…」

「あら雪ったら、肉食ね♪」

「……はぁー…」

深い、深いため息をついた。

…色んな意味で。


それから雪風はお風呂の中であった事を簡潔に述べると、蓬はニヤニヤと笑い、2人は当時の事を思い浮かべてるのか顔をりんご並に赤くしていた。



翌朝、雪風はずっと家にいる如月先生を見てふと疑問に思った事を口に出した。

「そう言えば如月先生、ずっと家にいますけど仕事はどうしたんですか?教師ならまだ夏休みでは無いと思いますが…」

「あっはは、大丈夫ですよ暁さん。仕事ならお泊まり会の前に終わらせて何もないですから」

そう言いながらスマホを見る。

そしてピタッと動きが止まる。

如月先生の顔からは余裕の表情が消え失せ、汗をダラダラを流す焦りの表情へと変化していた。

「ど、どうしよう…外崎先生からめっちゃ連絡入ってる…」

「…ご愁傷様です」

「助けて下さいよ暁さん!私ここで人生終わるの嫌ですよ!」

「そ、そんなこと言われても…私にはどうする事も出来ませんし…」

「うぅ〜…」

頭を抱えて涙目になっていたが、何かを思いついたのか笑顔で雪風を見た。

「そうですよ暁さん!暁さんも一緒に来れば怒られる時間も減るかもしれないじゃないですか!」

「それは無いと思うんですけどねぇ…」

「とにかく一緒に来て下さい!お願いしますよぉ!」

教師が生徒に懇願するのはどうなのだろうと疑問に思っていた雪風だったが、やがて諦めたのかため息をついて

「分かりましたよ…一緒に行きますよ」

「流石暁さん!なんたる寛大な心…!」

「あー早く行きましょう。確か車があるんでしたよね?それで学校へ行きますか」

「了解です!」

ビシッと敬礼をして玄関へ向かう如月先生をため息をつきながらついて行った。

そうして学校へ向かう車内にて

「それにしても暁さんは寛大な心をお持ちですね!」

「そうですかね?別に嫌なことは嫌と言いますし、そんな事は無いと思いますが」

「いやいや!暁さんにとっては普通の事でも私にとっては驚く事ばかりですよ。家事全般もテキパキと完璧にこなしますし、私もそこまで行きたいものです…」

「まあ、慣れれば行けると思いますよ」

「慣れ、ですかぁ。じゃあ私ももっと頑張らないとなぁ。あ、そろそろ着きますよ!」

「はい。あ、制服じゃなくて私服で来ちゃった…」

「大丈夫です!私がなんとかしますから!」

「なら、大丈夫ですね。早速外崎先生のところへ行きましょう」

「はい!」

ニコニコと笑顔でそう返事をする如月先生。

だがこの後、外崎先生がどんな表情で待っているのかを想像する事はしなかった。



「それで?如月先生は一体何をしていたんですかねぇ??」

「それは…その…」

「え?聞こえませんね?」

「ご、ごめんなさい…」

如月先生は正座をして縮こまっていて、それを外崎先生が足を組んで見下ろす形になっていた。

というのも、2人は外崎先生に会いに行くために職員室へ向かったが、途中で雪風が「お手洗いに」という事で如月先生が1人で職員室へ向かった。

そこで見た外崎先生は異様な空気を放っており、如月先生を見つけた途端鬼のようなオーラを纏い突進して来た時は失神するんじゃないかと汗を流していた。

「そ、それは事情がありまして…」

「へぇ?どんな事情があったんですか?」

「それは…プライベートの内容なので…」

「如月先生」

「は、はひっ!?」

落ち着いた声の裏腹の恐ろしい怒りを感じ取りビクリと肩を震わせ返事をする。

「プライベートであっても仕事をなげうっていたのなら、あなたは話す義務があると思いませんか?」

「お、思います…」

「ですよね?なら話して下さい。安心して下さい。私は怒りませんから」

「…めっちゃ怒ってるじゃないですか…」

「何だって?」

「な、何でもないです!話します!」

恐怖で染まった表情で外崎先生の目を見て

「じ、実は…」

そう言いかけたその時

「あ、やっぱりここにいたんですね。職員室に行ってもいないから家庭科室かなと思いましたが、ビンゴでしたね」

救世主(?)が現れた。

「あ、あかつきさぁぁ〜ん…」

涙目で振り返ると、教室のドアからちょこんと顔だけ出している雪風がいた。

その仕草に如月先生が安堵を通り越して心にグッと来ていたのは内緒である。

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