14話
その日の夜、雪風達はリビングで食事を囲んでいた。
「まさか先生とお友達とお泊まり会をしていたなんて、びっくりしたわ」
「一番びっくりしたのは霞さんがここで暮らすってことだけどね」
「…俺達的には雪が結婚するってことの方が驚いたけどな」
「ほんと」「ほんとですよ」
「それについては何も言い返せません…」
霞はシュンとして言う雪風を愛おしく見つめ
「雪と始めて出会った時より今の方が可愛くなってるし、このお料理も美味しいし、いい人に出会えたなって気持ちが強いわ」
その言葉に雪風は苦笑して
「それは良かったよ。霞さんもあの時より大人になってるし、お互いに成長したね」
「えぇ、そうね」
笑みを返す霞と雪風を見ながら
「なんか、普通に夫婦みたいな感じだな」
「ほんとね」「ほんとですね」
その言葉に雪風は苦笑する。
「まだ結婚できる年齢じゃないのに夫婦みたいに見えるっていうのはなんだか不思議な感覚だよ」
それに、と雪風は霞の方を向き
「霞さんも、もうあんな事しないでよ?私そこだけが心配なんだけど…」
小声でそう言うと、霞はにこりと笑って
「大丈夫よ、あれはしないから」
「何を話してるんだ?」
そこへ蓬が首を傾げながら聞いてくる。
「ちょっと不安な事があったから聞いてみたんだ。どうやら大丈夫そう」
「?ふうん」
そんなことを話していると、夕食を食べ終わり各自風呂に入る。
「じゃあ行ってきますね」
「行ってらっしゃい」
如月先生と千夜が風呂に入るのを見届けると、霞に向き
「霞さんは一緒に入らないの?」
「私はまだ恥ずかしいから、別で入るわ」
「そっか」
「…本当に夫婦だなぁ」
「雪、上がったぞー」
「あ、了解」
蓬が風呂から上がってきたため、ちょうど洗い物を終えた雪風は風呂場へと向かう。
「ふぅ〜…」
体を洗い終え浴槽に浸かると、気の抜けた声を出す。
その時、風呂場のドアが開いて誰かが入ってくる。
「…?」
若干体を湯に浸からせてドアの方をじっと見ていると、霞の声がした。
「雪、いる?」
「う、うん。いるよ…」
そう答えたが、雪風は何となく嫌な予感を覚えた。
案の定予感は的中し、ドアが開く。
そうして入ってきた霞は、タオルで体の局部を隠しているだけなため、シミ一つない手入れされた白い肌や体の凹凸がはっきりと分かる。
「か、霞さん、何を!?」
嫌な予感が的中し、慌てて顔を覆う。
「何をって…お風呂に入っただけよ?」
「入っただけって…!」
タオルを身につけていない雪風はすぐに出て行くこともできず、湯船に浸かったまま背を向く。
すると、霞は体を洗い始めた。
そのまま何もできず、ただ目を瞑って背を向け続ける雪風をちらりと見ながらも体を洗い終え、湯船にゆっくりと浸かる。
「ヒゥッ…」
そして雪風を優しく抱きしめる。
その仕草はぬいぐるみを愛おしく抱く動きで、雪風は体を小さくしたまま固まる。
「ふふ…相変わらず雪は可愛いわね」
「か、霞さん?こういうことはしないって夕食の時に言ってたはずじゃ…!」
「…何のことか分からないわ」
「えぇ…」
「それにしても、普段も可愛いのに濡れている雪も可愛げがあるなんて…食べちゃいたいなぁ」
舌舐めずりをしながら言う霞に暁は引きつった笑みを浮かべる。
「そ、それは勘弁して欲しいなぁ…それに…ひゃあっ!」
雪風の言葉は続かず、身体が反る。
霞が雪風のうなじから背にかけて、ゆっくりと指でなぞったからだ。
「雪の肌って白いね…女の子として生きていっても誰も疑わないくらい」
「そ、それはどうも?と言うべきなのかな…」
「…ねぇ雪、こっち向かない?」
「え!?」
「雪の身体、もっと見たいなぁ…なんて」
「それは色々と心臓に悪いから勘弁願いたいね…」
「そう…残念だわ」
そう言って霞は再度雪風を優しく、優しく抱きしめる。
雪風はその行動にビクッと震え、しばらく固まっていたがやがて限界が来たのか
「ご、ごめん…のぼせそうだから上がるね…」
「あら」
そう言って急いで風呂場を出る。
「はぁ…心臓に悪いなぁ…」
ポツリとそう呟き体を拭いて寝巻に着替えるのだった。