12話
「「!?」」
その場にいた人々は驚き、向かってくる車を見つめたまま動けなくなる。
「雪風!」「雪ちゃん!」
雪風の両親の言葉で動けるようになった雪風は、突進してきた車を霞を庇って転がりながら回避する。
がばっと起き上がり、霞の父親の方を見て
「おじさん!あれを止められる物ないの!?」
「け、拳銃なら、確かボディーガードが…」
そう言って慌ててこっちに駆け寄ってくるボディーガードを見る。
「なら、抵抗するようならそれで運転してる人を撃って。霞さんが狙われてるかもしれないから」
「…分かった。そう伝えよう」
早口でそう伝えると、自分の娘が狙われているかもしれないという状況で躊躇してる場合ではないと悟った霞の父は真剣な表情で頷き、ボディーガードに素早く指示する。
「霞さん?大丈夫?」
「う、うん…けど、あの車、私を狙ってたよね…?」
「そう、だと思う…」
車の方を見れば、もう戦意は喪失してるのか、車から出て両手を上げ、床に伏せている2人の男がボディーガードらしき人達に囲まれていた。
「どうやら捕まったみたいだよ。改めて大丈夫?怪我とかしてない?」
「…」
「霞さん?」
霞は雪風を見つめたまま硬直し、一言も発さない。
「…霞さん?大丈夫?」
雪風が再度声をかけると、霞はビクリと体を震わせ、やがて涙をこぼした。
「か、霞さん?どうしたの?」
「こ、怖かった…怖かったよぉ〜!」
そうして雪風に抱きつく。
「…よしよし、もう大丈夫だから…」
雪風は払うことなく、頭を撫でて優しい声音でなだめる。
「お嬢さん」
肩を叩きながら呼ばれた声に振り返る。
「ありがとう。君は私の娘の命の恩人だ」
にこりと笑ってそう言う霞の父につられて笑い
「そんなものじゃ…」
「いやいや、間違いなく命を救ってくれた。なぜなら…」
そう言って連行される男2人を指し
「あの男らは私の娘を狙ったと自供したからな。だから君は娘の命の恩人だよ」
「…そうですか」
「さて、お礼をしたいんだが…君の両親に承諾を得てくれないかな?」
「あ、はい。霞さん、ちょっとごめんね」
雪風は霞を預け、両親に事情を説明する。
両親は快く承諾し、宝城家へ向かうことになった。
「でっか…」「大きい…」
雪風の両親は目の前に広がる光景に無意識にそう呟いた。
「ははは、まあお入りください」
霞の父、宝城光洋みつひろは軽快に笑い、家の中へと招く。
「さて、改めてお嬢さん、ありがとう」
「お嬢ちゃん、ありがとうございます」
「雪、ありがとう!」
「あの…」
にこりと微笑み礼を言う霞達を申し訳ない顔で止める。
「ん?」
「私、お嬢さんじゃないです」
『え?』
「男です」
『……えぇぇ〜〜!?』
宝城家の驚愕の声が大きい家に響き渡った。