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the keys  作者: 羽村奈留
98/158

第98話:サザーランド王都19

 オーカスが言う。

「それは氷の魔法。血流を凍らせる事ができるから即死魔法の成功率が高いのですね」

 ニックはオーカスに意味有りげに微笑んでから、ラグの足元に荷物を投げた。

「部屋にあった荷物を全部持ってきた。地竜に載せて、一刻も早くここから逃げるんだ」

「礼は言わんぞ」

 ラグは荷物を持ち上げ、手早く地竜に載せて飛び乗る。

 オーカスも急いで支度をして地竜に乗る。

 そのオーカスの後ろにニックが跨った。

「げ! 貴様!!」

 ラグが怒って言うよりも早く、ニックはオーカスが握っている手綱を握って地竜を走らせた。

 ラグは地竜の尻を叩いてオーカスとニックが乗る地竜を追いかける。

「おい。こら! 待て!!」

 恐ろしい形相で追いかけてくるラグに、ニックは愛を込めた投げキッスをしてからオーカスに言った。

「悪いけど、俺も逃げないと命が危ないんだよね」

 オーカスは地竜に揺さ振られながら言う。

「あなたを巻き込んでしまってすいません」

「いいって。巻き込まれたっていうより、俺が飛び込んだって言ったほうが正解だから」

「え?」

 ニックはオーカスの前に左腕を出す。褐色の肌の上に何も無いが、ニックが呪文を呟くと腕にサファイア色のブレスレットが現れた。針金状の青い金属がミサンガのように編んである。

「あ! 水の鍵。あなたが鍵の継承者の?」

 オーカスが首を動かして背にいるニックを見ると、ニックはエメラルド色の瞳でウインクをして挨拶をした。

「そう。俺が水の鍵の継承者。ニコラス・グラン・ケルティック。今までどおり、ニックと呼んでくれ」

 間近で見るニックの顔は、髪と肌の色が違う以外はケルティック将軍に似て甘いマスク。ニックが好きなのがラグだと分かっていても、間近でニックを見ているオーカスの頬は赤くなった。

 その後ろで、まだ何も知らないラグは、

「どこへ行く? こぉらぁぁ!!」

 血走った怒りの眼を剥き出しにして、オーカスとニックが乗る地竜をひたすら追いかけていた。

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