第97話:サザーランド王都18
オーカスは走りながら先ほどの戦闘を思い出してニックを分析する。
「ニックの戦い方は訓練されたアサシンそのものでした。即死魔法の成功率もほぼ100%。二つの魔法器を同時に使っても、平気でいられる体力と精神力は、強い魔力を持ったアサシンだと思います」
ラグは急ぎ足で宿に向かいながら言う。
「俺は、殺傷能力を持った奴にケツを狙われたんだな」
「あははは」
オーカスは急に笑い出し、ラグはオーカスにも怒る。
「笑い事じゃないぞ」
「だって、あの人の好みがラグだったなんて」
オーカスが笑っていると、ラグは無言で走りオーカスから離れてどんどん先を走って行く。
「思い出したくもない」
「ラグ。待って下さい」
オーカスは笑いながらラグを追うようにして急いで宿に向かった。
二人が宿に到着すると、既に宿の前に剣士の死体がいくつも転がっていた。
「宿も襲われたか」
警戒して腰の剣を抜くラグの前に、また魔法剣士の集団が現れた。
オーカスは、剣を握り魔法器を作動させる。
「先ほどの戦いで、彼らの戦闘パターンは分析済みです。ここは私一人で大丈夫ですので、ラグは部屋にある荷物を取りに行って下さい」
「分かった。頼んだぞ」
ラグが走り出した時、集団は急に倒れた。
「なんだ?」
ラグは立ち止まる。
オーカスは集団に駆け寄った。
「即死魔法を受けたようです」
「って、事は」
ラグが周囲を見回すと、あのニックが宿の玄関から出て来た。
「お二人さん。遅いって」
ニックの背には氷の羽でできた翼がある。ニックは空を飛んで先回りをしたようだ。