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the keys  作者: 羽村奈留
96/158

第96話:サザーランド王都17

 ニックは殴られた左の頬に触れ顎を動かしながら立ち上がる。

 オーカスはニックの体を支えながら言った。

「私を子ども扱いしないで下さい。私はそこまでラグに守られなければならないほど弱くありません」

 ニックは言い合いをしているラグとオーカスの間に入った。

「ちょっと待って。大きな誤解をしてる。俺はこの子より、あんたのほうが好みなんだ」

 オーカスを下がらせてラグの前に立った。

 ラグの怒りは一気に頂点に達した。

「貴様!」

 ラグはまた拳を繰り出す。

 今度のニックは、ラグの拳を右手のみで掴んで受け止めた。余裕のあるニヒルな笑顔を浮かべて、瞳はラグを愛しそうに見つめている。男口調だが、先ほど殴られた左頬を押さえている仕草は女っぽい。

「恰好いい人に惚れちゃうのは仕様が無いでしょ。そのハンサムな顔と逞しい体で、俺の前に現れたあんたが悪い」

 その横でオーカスが驚きの声を上げた。

「ラグが好み! ええぇぇ!!」

 ニックは赤い髪を揺らし、緑の瞳でにっこりとする。

「俺は、あんたみたいなワイルドな男が好みな訳」

 ラグはニックに掴まれた拳を振り払った。身を翻して去って行く。

「オーカス。帰るぞ。薄気味悪い奴に構ってられるか」

「あ、はい」

 オーカスはニックを見るがすぐにラグを追いかけて行く。

 ニックが触れている左頬が淡く光り腫れが治っていく。魔法でラグに殴られた頬を治療したようだ。顎を動かして腫れのひき具合を確認すると、去って行くラグとオーカスに言った。

「連中は、居所を突き止めた。宿に戻ったらすぐに旅立つんだ」

 オーカスとラグは立ち止まる。

「お前は一体――」

 ラグは振り返るが、もうそこにニックの姿はなかった。

 オーカスは、ニックの立っていた場所を見つめながら言った。

「音も立てず、足跡も残さずに消えてしまうなんて、ただのガイドではなさそうですね」

「敵か味方か分からんが、とにかくあいつが言ったとおり急いで戻るぞ」

「はい」

 ラグとオーカスは、急いで宿に向った。

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