第95話:サザーランド王都16
「ガイドの仕事って、夜のほうがハードなの」
ニックは両手の短剣を淡く輝かせて目の前の魔法剣士と戦う。
オーカスは飛んで来た魔法の属性を瞬時に把握して、弱点になる反属性魔法を投げつける。
「まだ夜のガイドを諦めてなかったのですね」
「何! 夜のガイドだと? それは、どういう事だ?」
ラグは斬りかかってきた魔法剣士の剣を受け止めてから斬り倒す。ニックから詳しい話を聞きたいラグは、瞬間移動で魔法剣士の間を縫うようにして走り抜け、一人で残りの魔法剣士を全て倒してしまった。
オーカスは周囲を警戒するが、もう新たに敵が現れる事はなかった。
ニックは、ラグの見事な戦い振りに称賛の口笛を鳴らす。
「すげぇな。あんた。魔法を使わずに複数を同時に倒せるのか!」
ラグは剣を手早く鞘に収め、身元を確認するが、どの魔法剣士も身元が判るような手掛りは無かった。手掛りが無ければ、残るは気になる事を言ったニック。ラグはニックに歩み寄り襟首を掴んだ。
「おい。夜のガイドってなんだ? 奴らに俺たちの居所を教えたのはお前か? いくらで俺たちを売ったんだ?」
オーカスが仲裁に入る。
「違います。ラグ。ニックから手を放して下さい」
ニックはラグに揺さ振られながら言う。
「俺はこの子に夜のガイドをしてやろうかと」
「なんだと!」
言葉の途中で、ラグはニックを殴った。
ニックはよろけて倒れた。
オーカスはニックに駆け寄って言う。
「ラグ。乱暴はやめて下さい。この人は私たちを助けてくれたのですよ」
ラグは拳を握ったまま言った。
「このガイドの野郎は、お前の少年の体が目的で助けたんだ」
「それは昼間に言われたので知っています」
「言われただと。なんですぐ俺に言わないんだ!」
ラグの拳に力が入り震えている。