第94話:サザーランド王都15
オーカスも遅れてはいない。自分の周りに雷の魔法陣を作り、周囲にいた魔法剣士に雷を浴びせる。
集団は思った以上に人数が多かった。倒された仲間の屍を踏み越えてオーカスとラグを取り囲み攻撃を繰り返す。
場所が王都という事もあり、事を静かに終わらせて宿へ帰りたいラグとオーカスは思うように戦えず、不利な状況に追い込まれ逃げ道を探しながら戦い続ける。
その戦いの最中にニックが現れた。集団の中に飛び込み、片足を軸にターンをして両手にある短剣で相手を斬っていく。短剣は腿や腕、脇の下や首などを通り確実に相手の動脈や静脈を切断していく。斬られた相手は血を噴き出して倒れ、出血多量の即死状態だ。
集団は戦いに慣れているようで、ニックの戦闘を即座に分析して戦闘方法を変更してきた。集団はオーカスたちの動きに合わせて三つに分裂した。ニックを取り囲んだ集団は、ニックが身のこなしの軽い両手の短剣使いという事で、ニックの行動範囲を狭めて動きを封じ、至近距離で魔法攻撃をしてきた。
ニックは攻撃を避けたり水の分身を作って身代わりにしながら戦い、集団の動きを目で追って冷ややかに笑うと、両方の短剣に備わっている魔法器を作動させた。
「今のうちに逃げた方がいいんじゃない?」
集団はニックの笑顔を見て気付く。ニックを取り囲み追い詰めたのではなく、ニックの戦法によって誘き寄せられたのだと。
集団が気付いた時には既に手遅れだった。地面や空中に円が現れ、揺れる波紋となって魔法陣は広がりを見せ、牡丹模様の呪文の曲線を描く。
魔法陣に捕らわれた敵は逃げようとするが足を動かしたとたんに即死した。
ニックはその後も踊っているような軽快なステップで魔法剣士を倒して進みオーカスと背中合わせになると、呼吸を整えながら短剣を構えた。
「ちょっと、俺のお客さんを襲わないで欲しいな」
オーカスは、ニックの背が自分の背に当たるのを感じながら言った。
「ニック。どうしてここに?」
ラグも瞬間移動をして、オーカスとニックの二人に背中を合わせる。
「もうガイドの仕事は終わったはずだろ?」




