第88話:サザーランド王都9
「ブロマイド!?」
同時に驚くラグとオーカス。
ニックは腰にあるポーチからケルティック将軍のブロマイドを何枚か出した。
「生前のケルティック将軍はとてもハンサムで、まだ決まった相手もおりませんでした。サザーランド王都ではアイドル的存在だったので、こうして彼のブロマイドがあるんですよ。買います?」
「俺はいらん」
ラグは即答で断る。
「私は買います。できれば全身が写っているのが欲しいです」
オーカスは懐から財布を出した。
ラグは意外だと驚く。
「おい。なんで買うんだ?」
「欲しいからに決まっているでしょう」
オーカスはさらりと返事をして購入したブロマイドを懐にしまった。
その後、ニックはケルティック邸の客間や庭園を案内し、アフタヌーンティーが楽しめると言って、ラグとオーカスを庭園のテラスに誘導した。
オーカスはニックの誘導に素直に従って椅子に座る。
ラグは椅子に座らず白いテーブルを見ている。
オーカスは不思議に思ってラグに声を掛けた。
「ラグ。どうかしたのですか?」
ラグは、この白いテーブルが夢の中で見たものと同じだと気付いたのだ。周りを見回せば風景も夢の中で見たのと同じ。ラグは、ニックの前で驚きの声を出す訳にいかず、震える手で椅子を掴むと腰かけた。
「なんでもない。歩き疲れただけだ」
「ならいいのですが」
オーカスは、それならば次の事をと、先ほど購入したブロマイドを懐から取り出した。
ニックは二人が席に着いたのを見て「ここで待っていて下さい」と言ってアフタヌーンティーを取りに行く。
ラグはオーカスが見ているブロマイドを覗き込むようにして見た。
「お前は、同性のそういうのが好みなのか?」