第87話:サザーランド王都8
ラグはオーカスと目を合わせてからニックに言った。
「今からでもいいのか?」
「ええ。いいですよ。とりあえずガイド料などを説明しますから、俺と一緒に昼の食事でもしましょうか?」
言うとニックは早速ラグとオーカスを手ごろな飯屋に案内した。
質の良い食事に手ごろな値段が気に入ったラグとオーカスはニックの話を快く聞き、特にニックという酒飲み仲間ができたラグは喜んでニックの話を聞いた。もうラグとオーカスに、ニックのガイドを断る理由は無く、食事が終わるとニックの案内でケルティック邸へ向う事になった。
ケルティック邸に到着し、ニックはオーカスがよく知っているケルティック邸を示して説明をする。
「こちらがケルティック邸です。サザーランドでは一、二を争うほど建物が古く、代々王宮の要人を排出してきただけあって、建物の作りは堅固で格調高いものになっております。特に4階建ての屋敷を支えている大理石の柱が有名で、大理石を切り出し当時リー地方にいた上級クラスの土の魔法を使う匠を何人も雇って加工をし、屋敷を守る防御魔法も無数に施されておりまして、現在はケルティック家の富と繁栄の象徴になっております」
ニックは説明しながらオーカスが乗る地竜の手綱を引いて移動する。
「この大理石でできた門が公用の出入り口になっており、俺たちガイドもここからの出入りを許されております」
ニックは門番にガイド証を提示して中に入った。
ラグとオーカスもあとに続いて中に入る。ニックに促され二人は地竜から降りた。
「ニックさん。ケルティック卿に会う事はできますか?」
「へ?」
オーカスの質問が突飛だったため、ニックは返事ができない。
ラグは質問の内容を少し変えて言った。
「邸内を見学させてもらっている時に、ケルティック卿とすれ違う事はあるのか?」
ニックはそういう質問だったのかと頷く。
「ああ。有名人を一目見たいのですね。残念ですが、将軍職に就かれていたケルティック卿は、1年前の戦争で戦死され、現在会う事はできません。ほかにご兄弟が二人、姉妹が三人おりますが、王宮内の職についている要人で現在は王宮に住んでいらっしゃるため、やはり会う事は不可能です。あ、ケルティック将軍のブロマイドならありますよ」