第83話:サザーランド王都4
改めてニックと比べると、やはりラグの身長は少し低い。ただし、肩幅はラグのほうがあり、元軍人だったこともあってラグの体がでかく見える。ニックの年齢はラグと同じくらいか。
ニックはラグを上から下まで見てから言った。
「愛人ではなく、保護者がいたんだ」
「そういう事だ」
ラグは二匹の地竜の手綱を持つとオーカスを連れ、ニックに背を向けて歩き出した。
ニックは去って行くラグの背を見ながら呟いた。
「俺としては、ワイルドっぽいあんたのほうが好みなんだけど」
そうとは知らないオーカスは、ラグと肩を並べて歩きながら言う。
「ラグ。酒臭いです。それに香水の匂いまでさせて」
「久し振りに飲んだんだ。匂いくらい我慢しろ。お前も二十歳を過ぎれば、女を両脇に抱えて酒を飲むようになる」
「私はそんな事はしません」
オーカスは膨れっ面になりながらラグが引いていた地竜に跨る。
ラグも地竜に跨りながら聞く。
「で、鍵の継承者に会えたのか?」
「会えませんでした」
オーカスの膨れっ面は続く。
「だろうな」
ラグは勝ち誇ったように笑みを浮かべる。
オーカスはラグの横顔を見て余計に腹を立てた。
「ですから、今夜は王都の宿に泊まります。先に言っておきますが、敵国におりますので酒は程々にして下さい。それでは、私は宿の部屋をとりに行ってきます」
オーカスは膨れっ面のまま地竜を走らせる。
ラグは地竜の尻を叩いてオーカスを追いかける。
「俺はまた酒が飲めなくなるのか? 冗談じゃない!」
オーカスの耳にラグの声は届いていたが、ケルティック家の鍵の継承者に会えなかったのが悔しくて聞こえない振りをして地竜を走らせた。