第81話:サザーランド王都2
国立公園の東に王宮の立派な建物が見えている。
オーカスは広場へ行くと適当な木に地竜を繋ぎ、芝生に腰を下ろして魔法で作った蝶をラグへ飛ばした。自分が国立公園にいる事を知らせるためだ。もしラグが来てケルティックの一族に会えなかったと知ったら、きっとそれ見た事かとラグは笑い飛ばすだろう。ラグからの冷やかしを想像してオーカスの心の中にある砂時計は虚しさと歯痒さの砂粒を落とし心の底に降り積もっていく。
「一人の私は弱いな」
悔しさ半分、情けなさ半分を感じて落ち込んでいると、地竜がオーカスに擦り寄って来た。
「くるるん」
地竜はオーカスの手の匂いをしきりに嗅ぐ。その仕草を見てオーカスは立ち上がった。
「何か欲しいのですね。そういえば昼ご飯がまだでしたね。ちょっと待って下さい」
オーカスは積み荷を見るが、旅立つ予定が無い事もあって積み荷の中には食料が積んでいない。オーカスは、鼻でつついて食べ物を催促する地竜の首を撫でた。
「近くの店で何か買ってきますので、ここでいい子にして待っていて下さい」
「くるるん」
地竜は頭を摺り寄せてオーカスに甘えていたが、別の気配を感じて頭を上げた。横から差し出された果物の匂いを嗅ぐ。
果物を差し出したのはラグより背の高い男だった。髪は赤色で瞳の色はエメラルドと同じ緑、褐色の肌にベスト、その下にカーゴパンツをはいて、腰の両脇から二本の短剣の柄が見える。後ろが見えないから分からないが、後ろに二本の短剣が固定してあるようだ。
オーカスは急いで地竜の手綱を引く。
「よその人の食べ物を食べたらダメですよ」
「くるるーん」
地竜は匂いだけでもと、男が持つ果物に鼻先を向ける。男はにっこりとしながら果物を地竜の口先に運んだ。
「別にいいですよ。ほら、お食べ」
地竜はさっそく男が持つ果物に噛り付く。