第79話:終わりなき痛み5
ラグは、オーカスを励ます事もなく、いつもの冷やかし半分の口調で言う。
「どの道、即死させるだけの魔力があるなら、護衛はいらんだろ。敵のサザーランド国王に代々仕えている一族っていうのも気に入らん」
オーカスは地竜に乗り尻を叩いて眠っている地竜を起こす。立ち上がった地竜の上で揺れながら、オーカスはどこまでも真面目な口調で言った。
「しかし、シーライト将軍から仰せつかった任務なので、私はケルティック家の鍵の継承者に会わなければなりません」
ラグは、地竜に跨って地竜を立たせながら反論する。
「ダメだ。ケルティック家に行くという事は、敵の本拠地に行くって事だぞ。王の主治医かもしれんケルティックの奴に会えば、俺は耳と小指を切り落とされ鍵を奪われる可能性だってある。そんな危険な所へ行けるか。俺なら王が外出する日が来るまで、近くの酒場で暇を潰して待つね」
オーカスはラグの地竜に自分の地竜を寄せて言う。
「確かにサザーランド国王は敵だと思いますが、鍵には意思があります。悪事に手を貸すとは思えません」
ラグとオーカスの心の距離は近くなったが、近くなれば形の無い心でも摩擦は起きる。
ラグは、オーカスとの意見の食い違いを鬱陶しく思い、意志を曲げないオーカスの態度に腹を立てた。
「だったら勝手にしろ。俺は絶対にケルティック家へは行かないからな」
こうしてラグとオーカスは意見が合わないまま数日かけて東にある王都へ向かい、王都に入ってからのラグとオーカスは、王都の中心に位置する国立公園の広場で待ち合わせるということで、ラグは酒場へ、オーカスはケルティック家へと、別々に行動することになった。