第77話:終わりなき痛み3
「犠牲となった人々の思いが、今も敵味方関係なく自分の身に圧し掛かってくる。その重圧に耐えかねて苦しむような事があっても、死んでいった者が守ろうとした国や人々の平和な暮らしを約束できるその時まで、マジックナイトとして将軍の道を歩まなければならないと」
またラグの動きが止まり、今度は急に鼻で笑い出だす。
「ふっ、ふふふ――。魔法が使えない俺と、魔法で巨大飛空艇を落とすシーライト将軍を一緒にするな。比べる相手が違い過ぎるだろ。腹立ちを通り越し、呆れて笑えてくる。それに何度も言うが、俺はラグだ」
ラグは、鼻で笑ったままの表情でオーカスを見た。
「な。オーカス?」
オーカスは、急に笑い出したラグの笑顔が理解できない。
「ですから、私はきちんと訂正をして、ラグ殿と呼んでいるではありま――」
オーカスはムキになるが、ラグが言おうとしている意図をやっと理解した。
「今、私をオーカスと呼んだ。お前じゃなく、オーカスと。1ヶ月以上一緒に旅をしておりますが、オーカスと呼ばれたのは、これで二回目です」
オーカスは笑顔になった。
オーカスと目が合ったラグは赤面する。
「そんな事を一々数えるな」
オーカスは喜んでリズムをつけて呼ぶ。
「ラグ♪ ラグ♪ ラグ♪」
オーカスは隊長とはいえ、まだ子供っぽさが残る17歳。リズムをつけてラグを呼ぶ姿がエルフのようで、愛らしく見えたりする。
ラグは、急に近くなったオーカスとの心の距離に照れて、その照れを必死に隠そうとして動揺している。