第71話:土の意思3
「土の鍵!? これが?」
ラグはつい輪の中を覗いてしまう。
「古代の文献にあった絵とそっくりです。間違いなく再生と創造の象徴、癒しと錬金の魔力を秘めた、土の指輪だと思います」
オーカスは土の鍵の発見に感動しながら指輪を左の中指に填める。
ラグは止めようとして手を伸ばす。
「待て。指に填めたら俺の左耳のように取れなくなるぞ」
ラグが言っているうちに、オーカスは中指の根元まで指輪を押し込んだ。
「大丈夫です。鍵には意思あって。ほら。鍵の継承者じゃないと取れてしまうんですよ」
オーカスはラグの目の前で指輪を抜いて見せる。
「そうなのか……」
ラグは、確かに強い意志で口うるさく言う爺さんが自分の中にいるなと思いながら、オーカスが持っている指輪を手に取った。
指輪は少々幅があり、純金のような金属で表面は磨かれて鏡のようにラグの顔が映っている。
ラグも試しに中指に指輪を填めようとするが、輪が小さくて入らないので、指を変えて左の小指に指輪を填めてみた。ぴったりと吸い付くように指輪が填まる。
オーカスは、ラグが填めた指輪を見ながら言った。
「土の指輪って凄いですね。屋敷を一瞬にして燃やし尽くした火の鍵の魔力でも燃えずに残っているんですから」
ラグは夢中になって左の小指にある指輪を触っている。
ラグの様子が変なので、オーカスはラグの顔色をうかがった。
「どうしたのですか?」
「指輪が取れん」
オーカスはラグの小指にある指輪を引っ張る。
「そんなはずはないでしょう」
「いてててててぇ」
オーカスが加減無く指輪を引っ張るので、ラグは呻いて痛みを訴える。
「お前は、どういう引っ張り方をするんだ? 痛いだろ!」
ラグの手はオーカスの手よりも大きくて広い。手の温度はラグのほうが温かかったりする。