第7話:シーライト将軍4
「シーライト将軍。もう一人の鍵の継承者と合流をし、秘宝を探しに行ってもらいたい」
「秘宝を探す!? 恐れながらローラン国王。「王が秘宝の所持をするのは世界存続の危機のみ」と、神々と交わした契約があります。その契約を破るおつもりですか?」
「破るつもりはない。もしサザーランド国がローラン国にある鍵を手に入れれば、次に狙うのは秘宝。サザーランド国より先に秘宝の場所を把握しておけば、もしもの時に次の手が打ち易いのだ。それに鍵を持った継承者が移動しておれば、鍵の場所が分かりにくくなり奪われる心配が減り、ローラン国内での戦争も避ける事ができる。全ては我が国と秘宝を守るためなのだ。シーライト将軍、秘宝を探しに行ってくれるな?」
「そういう事ですか」
シーライト将軍は視線を落とした。テーブルにある鍵を握る。
「承知致しました。秘宝探しの命、謹んで承りましょう」
シーライト将軍はローラン国王に頭を垂れた。
ローラン国王はホッとした表情でシーライト将軍を見る。
「もう一人の鍵の継承者の事だが」
シーライト将軍はペンダントになっている鍵を首につけながら言う。
「それは存じております」
獅子色の髪を揺らして身なりを整えながらローラン国王を見つめる。その眼差しは純粋無垢。中性的で品のある顔立ちは、数々の戦いで返り血を浴びてきた軍人とは思えないほど清楚な美しさがある。軍人にしておくには惜しい獅子色の髪をまとう高貴な顔立ちで、ローラン国王の心を虜にしながらシーライト将軍は続けて言った。
「もう一人の鍵の継承者は、賢者コトックの血を引くコトック家の長女。鍵については国の極秘事項ですが、その息子ラーグ・フルフォンド・コトックは、ローラン国の南東に位置するコトック地方を統べるコトック家の跡継ぎにして、我がローラン国の軍人。1年前の戦争では、激戦を極めたコトック地方の東の地アルランドで戦い、サザーランド軍を撤退にまで追い込んだつわもの。帰還後、王より英雄の称号を与えられ、我ら軍人で英雄と称される彼を知らぬ者はおりません。ですが、現在の彼は軍におりません。1年前の戦争後、知事である父の役職を継ぐために、退役しておりますので、とりあえず今回の件の知らせと迎えのために、先にわたくしの部下をコトック地方へ派遣致しましょう」
「相変わらずそちは話が早いのう」
ローラン国王は会話をしながらシーライト将軍の品のある仕草を目で追い、無意識にシーライト将軍に手を伸ばす。
ローラン国王の手がシーライト将軍に届く前に、シーライト将軍は席を立った。
「では、ローラン国王。わたくしも秘宝探しの旅の準備がありますので、これで失礼致します」
ローラン国王はシーライト将軍を求めている自分の手の位置に気がつき、シーライト将軍に悟られないように近くにあったフルーツを手に取って、シーライト将軍の挨拶に笑顔で答えた。
シーライト将軍が会席の間を出て行っても、ローラン国王はシーライト将軍が出て行った扉を見ていた。美しい将軍の魅了から解放されたローラン国王は、我に返り悲しみ満ちた表情になる。
「シーライト……」
ローラン国王は姿が見えなくなってもまだシーライト将軍を見送っていた。