第65話:リー家の屋敷15
「鍵の魔力は、民を守るためにあるのではなかったのか?」
ラグの言葉が貴族の口調に変わっている。
白い影は蔓を操りラグを襲う。
「知ったような口を利くな!」
蔓はラグの体に巻きつくが、巻きついた所から燃えて灰になっていく。
ラグは白い影に近づく。
「母上は、私にそう教えてくれた」
ゾンビもラグを襲うが結果は同じで、ラグに剣を振り下ろしたゾンビは急に燃え上がって灰になっていく。
白い影は怒りで髪を逆立てながら言う。
「火の魔力を身にまとうお前は何者だ?」
ラグの剣を握る手に力が篭もる。
「私は……。私は……」
「ええい。来るな! 私に近づくな!」
白い影は、ラグを取り巻く火の魔力に恐れ戦いて、空中にあった巨大な石をラグに飛ばした。
石を見上げるラグの剣にも火の魔力が宿り淡く輝く。ラグはその剣で巨大な石を突き刺した。
「私の名は、ラーグ・フルフォンド・コトック。賢者コトックの末裔にして、火の鍵の継承者!」
ラグは巨大な石を切り裂いた。
真っ二つに切り裂かれた巨大な石はラグの左右に落ちた。切り口は高熱を帯びて赤い溶岩に変わり、溶岩は流れ落ちて凍った沼から湯気が立ち昇る。
白い影はラグの言葉を聞いて悲鳴を上げた。
「ローランの火の鍵の継承者が目の前に!? そんなはずは……」
白い影の悲鳴でオーカスは気がついた。体力の消耗が激しくて体がだるいが動けないほどではない。オーカスはゆっくりと起き上がって、体を輝かせているラグを見た。
「あれは、最上位のスピリット級の魔力。鍵の魔力の輝き」