第64話:リー家の屋敷14
ラグは瞬間移動をしてオーカスを抱えると、また瞬間移動をして間一髪で巨大な石の下から飛び出した。
巨大な石は落下して凍っていた沼地に減り込んだ。
オーカスはラグ腕の中で手を伸ばす。
「すい……ません。もう……鍵の魔力に……対抗する……魔法があり……ません。ラグ……殿……だけでも……逃げ……」
だが、手がラグに届く前に、オーカスはラグの腕の中で気絶した。上級魔法の連続使用により体力を消耗し過ぎたのだ。
今まで何かと面倒をみてラグを支え、事があれば魔法を使い、剣を持って果敢に戦っていたオーカス。ラグの剣を止めるほど腕の立つオーカスが、今はラグの腕の中で瞳を閉じてぐったりとしている。
自分を支えてくれた大切な人がいなくなるのはもうイヤだと、ラグの脳裏に死んでいった者たちの姿が浮かび、腕の中にいるオーカスに次々と重なっていく。最後にオフェーリアの姿が重なった時、ラグは背中を曲げてオーカスの胸に額を落とした。
「オフェーリア……」
ラグはオーカスを抱えたまま跪く。
白い影は身を屈めたラグに近づいた。
「仕留め損なったが、もう逃がさぬ」
ラグの左耳のイヤーカフが淡く光る。それに呼応してラグの体も淡く光る。
ラグはオーカスをそっと下ろした。
「もう見捨てたりはしない」
白い影は動きを止めて、急に様子が変わったラグを警戒する。
「何を言っている? 気でも狂ったか?」
ラグは自分の剣を拾い立ち上がった。