第60話:リー家の屋敷10
入ってすぐ大きな肖像画が目に入る。美しい女性が描かれているが、部屋の中では剣と盾を持ったゾンビが蠢き、蔓が波打って動いている。
「一体何が始まっているんだ? おい、どこだ?」
「ラグ殿。私はここです。上を見て下さい」
オーカスに言われてラグが見上げると、オーカスは出入り口の上の壁に磔にされていた。
壁は蔓が茂りオーカスの手や足に巻き付いている。
「お前は、何をやらかしたんだ?」
「私じゃありません」
オーカスが答えているうちに、ラグの目の前に白い影が現れる。
「許しも無く、この部屋に入るな!」
白い影はラグに襲い掛かるが、ラグは白い影の手を避けて素早く移動して部屋の奥へ進む。オーカスを助ける機会をうかがうラグに今度はゾンビが襲いかかるが、ラグの動きは早く、ゾンビの剣は空振りをしてしまう。
オーカスは上から言う。
「多分、あの白い影は土の鍵の継承者です。名前は、カレン・シーセン・リー。ラグ殿。どうかあの鍵の継承者に、私たちが敵ではないと説明をして下さい」
ラグは踏み込んだ瞬間に消えるように移動して次々とゾンビを切り倒していく。
「何悠長な事を言っているんだ。お前はこの状況を見て、説明で事が済む相手かどうか判断がつかんのか?」
ラグは剣を持ってゾンビや蔓を切りまくっている。そう。ゾンビや蔓はラグの移動速度について行けないのだ。
白い影もラグを襲うが、やはりラグの動きの早さについていけない。白い影の怒りは更に増す。