第6話:シーライト将軍3
鍵は、大豆ほどの小さな金属の板。表面はオパールのように乳白色で虹色の光沢があり、鎖に繋がれている。どうやらペンダントのようだ。
シーライト将軍は、鍵をローラン国王に差し出す。
「どうぞ」
だが、ローラン国王は身を引いて断った。
「いや、見るだけでいい。もし触れて、所持をしたと神々に思われでもしたら、余はどんな目にあうか分からぬからな」
「ならば、鍵はここに置きましょう」
シーライト将軍は鍵を王の目の前に置いた。
ローラン国王は食事をしながら鍵をまじまじと見る。
「いつ見ても、こんな小さなものから軍の巨大飛空艇を打ち落とすほどの魔法が発動するとは信じられぬ。これも神々の成し得る技という事か」
「そうですね。ここまで小さい魔法器を創造された神々は、本当に恐れ多い存在だと思います」
シーライト将軍は器にあったスープを口に含んだ。品良く動く手は育ちの善さをうかがわせる。
ローラン国王はシーライト将軍の端正な顔立ちを横目で眺めた。
「そちを呼んだ本当の理由は、その鍵の事なのだ。サザーランド国王は、我が国の鍵をまだ諦めておらん。今もなお強大な魔力を持つ鍵を欲しがっておる。もし、サザーランド国に鍵が渡れば我が国はどうなることか。考えただけでも恐ろしい」
「ですが、古の神々と交わした契約は絶対です。鍵の魔力は神々に定められた血族の、それもごく一部の者にしか扱えません。王のご心配には及ばないかと存じ上げますが」
ローラン国王の表情が険しくなる。
「もし、ローラン国で暮らす鍵の継承一族が、サザーランド国に買収されていたらどうする? シーライト家の何人かが買収されてサザーランド国に入国したという情報も入ってきておるのだ」
シーライト将軍の顔色が変わる。
「それは本当ですか? 我が血族に裏切り者がいるとは信じられません」
「余も信じたくない。できる事なら」
ローラン国王の食事をする手が止まった。
「サザーランド国は鍵を狙い、また戦争を仕掛けてくるだろう。できる事なら、何も生まない国家間の争いは避けたい。それで緊急議事を開き、皆で知恵を出し合った」
議事の結果をシーライト将軍に告げる前に、ローラン国王は水を口に含んだ。数回喉を鳴らしてグラスの水をゆっくりと飲み干す。空になったグラスをテーブルに置いてシーライト将軍の顔を見た。