第57話:リー家の屋敷7
白い影の存在に気付いていないラグとオーカスは母親を探して各部屋を見て回る。
屋敷の惨状を見る限り母親が生存している可能性は低い。だが、未だに死体が見つからないのは、生きているからではないかと、オーカスの胸中に淡い期待が過ぎる。
ラグも必死に各部屋を見て回っていた。
「母親が、子や夫を置いて逃げるはずがない。まだこの屋敷のどこかにいるはずだ」
ラグは廊下に出て叫ぶ。
「鍵の継承者よ。俺たちは敵じゃない。助けに来た。出て来てくれ。頼む」
だが、不運にも白い影はラグの所にはいなかった。白い影はオーカスの後を追っていたのだ。
そとうは知らないオーカスは、女性の白骨化した死体を順に調べていく。
「どれも使用人の女性ばかりですね。でも、使用人の女性の死体が多いという事は、この先に……」
オーカスは、推理の是非を我が内に問いながら廊下の先を進む。そして、その奥の豪華な扉のある部屋を見つけた。
「もしかしてここが」
扉を開けると、部屋の奥に大きな肖像画がある。
描かれているのは30歳前後の女性。中国風に黒髪を結い上げ髪飾りをつけて、チャイナドレスを着て羽の扇子を左手に持ち椅子に腰かけている。
オーカスは肖像画を見上げて名を呼んだ。
「カレン・シーセン・リー。王宮書庫の資料にあった、土の鍵の継承者」
部屋の中を見る。天幕のあるベッドや大きな鏡のついた化粧台があり、奥にある部屋は衣裳部屋になっている。全て埃が被っているが、まだ格調高い趣が残っている。