第53話:リー家の屋敷3
オーカスは二匹の地竜の首を同時に撫でる。
「お前たち。私が迎えに来るまで、ここでいい子にしていて下さいね」
「くるるー」
「ぐるぐる」
二匹の地竜の返事を聞いてから、オーカスはラグを追いかけた。
「ラグ殿。私も行きます。同行させて下さい」
「勝手にしろ」
ラグは、横目でチラリとだけオーカスを見ると前にある屋敷を見ながら歩いた。
リー家の屋敷は、田畑に囲まれている。庭には噴水があり花壇には花が咲いていただろうが、今は庭の手入れをする者はなく、背丈ほどある雑草が生い茂り、噴水は蔦が絡まっていて、溜まっている水は黒く濁っていた。
ラグは壊れた塀を跨いでリー家の敷地内に入った。
オーカスも後に続いて敷地内に踏み入る。
「これじゃあ、私たちが賊みたいですね」
そう言うオーカスの前で、ラグは剣で雑草を切り、切られて茎がささくれ立っている地面を踏んで一歩一歩と足を進ませている。
オーカスは、汗が滲んでいるラグの顔を見ながら言った。
「ラグ殿。こんなに生い茂った雑草を剣で刈りながら進むのは時間がかかりますので、私が魔法で雑草を一掃しましょう」
オーカスはラグの前に立って剣の魔法器に手を当てる。だが何も起こらない。
まだほんの数秒しか経っていないのに、ラグは待ちくたびれてオーカスに言った。
「お前は何をやろうとしているんだ?」
「ちょっと待って下さい。土属性の魔法は、発動に少々時間がかかるんです」
「魔法の発動は、明日になります。っていうんじゃないだろうな?」