第51話:リー家の屋敷1
本日は、ラグからの発言が多い。
オーカスは、またリーの屋敷に行くと聞いて驚いた表情をする。
「リー家の屋敷は、誰も住んでいないので行っても無駄だと思いますよ。ローラン城の指示通り、次の鍵の継承者の所へ行きましょう。そのほうが確実です」
もう驚きを隠すための作り笑顔はしない。手綱を引いてオーカスは地竜を歩かせる。
ラグも地竜を歩かせながら言う。
「リー家の屋敷に出るという魔物が何か知っておきたいんだ」
「どうして魔物にこだわるのですか? それに急に隊長みたいに仕切りだして」
オーカスは地竜を操りながら膨れっ面で言うが、ラグの返事が無いのでまた無視なのかと思いラグを見る。
ラグは手綱を握り黙って前を見ている。オーカスの予想どおり、いつもの無口なラグに戻ってしまっていた。
その後、ラグとオーカスは近くの飯屋で一緒に朝食をとるが、その時もオーカスとラグの会話は無く、ラグから言葉があったのは食事が終わってからの「行くぞ」の一言だけだった。
ラグは店を出て行く。
「あ、はい」
突然のラグからの言葉にオーカスは遅れ気味の返事をして、ラグを追いかけるようにして店を出た。
ラグとオーカスは地竜に乗りリー家へ向かう。
やはり二人の間に会話は無く、二匹の地竜の土を踏む足音だけがしている。
オーカスはつまらなさそうな表情をして地竜の背で揺れていたが、リー家の屋敷が見えた時に急に地竜が嘶いて立ち止まった。