第49話:リー地方の宿屋1
気がついてすぐラグは目蓋に光を感じて目を開けた。
やはり窓際にはきちんと身形を整えたオーカスがいて外の景色を眺めている。
ラグが起き上がると、オーカスは外の景色からラグに視線を移す。
だが、今日はいつもの朝と違っていた。
オーカスが口を開く前に、ラグが口を開いたのだ。
「おはよう。昨夜はよく眠れたか?」
ラグは眠そうな表情をオーカスに向け、窓から入ってくる光に目を細めながら大きな欠伸をした。昨日のラグは、リー家の屋敷を見てからかなり機嫌が悪かったのに、今朝は至って穏やかである。どういう心境の変化だろうか?
オーカスは、ラグの変わり様に驚いて、今のラグがどういう状態なのか分析をするためにラグを凝視ししてしまい、ラグに返事をするのを忘れてしまっている。
「俺は眠れたかと聞いたんだが?」
「あ、はい。よく眠りました。途中、ラグ殿のうなされ声で眼が覚めましたが、眠れたと思います」
オーカスは、意外なラグの態度に驚いているだろう自分の表情を隠すために、急いで笑顔を作った。
「今朝も魔法通信でローラン城に連絡を取りました。リー家の屋敷の状態を伝えたところ、仕方が無いので次の鍵の継承者の所へ移動してもよいとの事です」
昨夜もラグはうなされていたのだが、突然の変化にオーカスはラグへの心配を忘れている。
ラグは支度をしながら言った。
「そうか。魔法が使えない俺のお守りをさせて悪いな」