第48話:白い影2
ラーグは思う。これで楽になれる。と。
ラーグの体は冷たい沼の中にどんどん沈み首まで入った時、闇の中に白い影が現れた。
「ラーグ!」
力強い男の声はラーグに届くが、ラーグはその声の主を見ようともしない。
「ラーグ。何をやっている」
白い影は沼の中に手を入れてラーグの腕を掴む。
「ラーグ。それはオフェーリアでも、君の部下でもない」
白い影はラーグを地面から引き上げた。
ラーグの腕の中にいたオフェーリアは、ラーグの手から滑り落ち、沼の中で悲痛の叫び声をあげる。
ラーグは白い影の手を払いのけて抵抗する。
「何を言う。すぐそこにオフェーリアがいるのに」
沼を見ると、オフェーリアがラーグの名を呼んで泣き叫び、その周りを無数の手がうごめいて副隊長と呼んでいる。
「私は皆の所に行かなければならないんだ。手を放してくれ」
白い影はラーグを上へ引き上げながら言った。
「あれはオフェーリアでも君の部下でもない。よく見ろ。君にはその能力があるはずだ。邪悪なるものを退ける神聖な火の鍵の継承者としての能力が」
その言葉のあと、ラーグを掴んでいた白い影は急に広がり、周りの闇を消して光に変えていく。
沼の中では、オフェーリアと部下たちが光に晒され、ラーグを呼んでいた声が光を恐れる畏怖の声に変わり、オフェーリアの姿は溶け出して、ドロの体を持つ魔物へと変貌する。
白い影の言った事は真実だったのだ。
ラーグは自分の腕を掴んでいる白い影を見た。
「あなたは、一体……」
ラーグは見るが、そこに腕を掴んでいた白い影はなかった。ラーグは光を掻き分けるようにして進み白い影を探す。
「どこにいるんですか?」
立っているとも、浮いているとも分からない光の中。泳ぐようにして、ラーグは白い影を探し回った。