第45話:リー地方2
「リーの土地は初めてですからね。地図を見ながら進んでいるのですが、こうも景色が同じだと、私もどこで曲がっていいのか判断が難しくて」
のん気なオーカスに苛立ちを覚えたラグは周りを見ながら言う。
「こういう時はだな。すれ違った人に道を尋ねればいいんだ」
ラグは早速農作業をする人を見つけて声を掛けた。
「手を止めさせてすまんが、リー家の屋敷へ行きたい。どう行けばいい?」
ラグに声を掛けられた農民はちょうど畑でとれた野菜を荷台に載せている最中だった。地竜に跨り近づいてきたラグとオーカスを見ながら作業を続けていたが、ラグの言葉を聞いたとたん農民の顔色が見る見るうちに青ざめていく。
「あんたら。リー家の屋敷に近づいたらいかん。もう何人もがあそこで行方不明になっとる。リー家の屋敷には、魔物が住んどるっちゅう噂だ」
オーカスはユーフォリアに生息している生物を思い浮かべながら聞く。
「魔物って大蛇ですか? それとも竜の類ですか?」
「生きて戻ってきた者がおらんで、魔物がなんなのか知っとる者はおらん。確か半年位前だよ。魔物が出るようになったのは。リー家が襲われて皆殺しになってからだ」
それを聞いて今度はラグの顔色が変わり、ラグは農民に詰め寄るようにして聞く。
「そのリー家の屋敷はどこだ?」
農民は手を横に振りながら言う。
「あんたら。リー家の屋敷に行くつもりなら、やめときな。命がいくつあっても足りやしない」
リー家の場所を教えない農民に対して、いつも無関心なラグが珍しく感情を露わにして気を荒くしている。
「つべこべ言ってないで、さっさと答えろ。俺は、リー家の屋敷はどこだ? と聞いているんだ!」
ラグの言葉に農民は怯えた表情をする。
「ひえぇ。この旦那も魔物みたいに怖いのぉ」
農民がラグを怖がって身を縮めて言わないので、オーカスは懐から銅貨を一枚出して、農民に見せた。
「怖がらせて申し訳ない。これでリー家の屋敷がどこなのか教えてくれませんか?」